第24話 天空神ホルス

「あった! あったよ水希!」


「やりましたね不動さん!」


 砂の下から現れたのはジッパー付きのビニール袋が三つ、それぞれ中身を確認する。


 出て来たのは全て金色に輝く隼の頭と人間の身体を持つ像、ミニチュアサイズの剣、円形のエンブレムだった。


「こっこれがあの『奈落のアメミット』を何とか出来るダンジョンギミックなんですか…?」


「そうだよ、後はこれで…」


 僕が準備をしようとしたその時、遠くの『奈落のアメミット』が咆哮を放った。

 次の瞬間、今まで青空だったのがいきなり夜空になった。


 なにか意味があるのか?

 すると僕たちの周囲に嫌な気配を感じる、僕は直ぐに周りの状況を確認する。


 するとこのストーンヘンジの回りに黒い闇が出現、その中から黒い肌をした人間が姿を現した。


「不動さん、空がっそれにあの人たちって…」


「…うんっどう見てもアンデッドかなアレは」


「はいっしかもあの階段の下にいたダンジョン犯罪者たちみたいです」


 水希の言うとおりその顔には見覚えがあった、あの科学者風の男もいた。

 やっぱり脱出手段が無くて死んでたか、或いは『奈落のアメミット』の生贄にでもされちゃったのかな?


 様子を窺うが人語を発する気配もなくあーうーと呻いているだけのようだ。

 しかしコイツらはどう見ても『奈落のアメミット』が僕たちの足止めを狙ってこの場に用意した手勢だと思われる。


 こちらが警戒しているとアンデッド共の目が紅く光った。

 来るか!


「なら容赦はしないよ…『そこは迷宮の神域、神秘なる地に眠れる守護者あり、目覚よそして力を振るえ』」


 ダンジョンギミック起動のキーワードを唱える。

 ストーンヘンジを思わせる大きな岩が次々と独りでに動き出した、それらが迫るアンデッド共を吹き飛ばしていく。


「不動さん…これは一体!?」


「この魔法陣がある場所の守護者であるゴーレムを目覚めさせたんだ、これで時間を稼げる」


 動き出した岩が組み合わさり一体の大きなゴーレムとなった。

 まだまだアンデッド共の数は多いので油断は出来ないが時間さえ稼げれば十分だ。


「それじゃあこっちの方の準備に入るから」


「私はアンデッドが来ないようにスキルで足止めをします」


「助かるよ、ありがとう」


 今もゴーレムがアンデッドをぶっ飛ばしてくれているが流石はアンデッド、中々倒されてはくれない。


 水希がスキルで更に水を操りアンデッドが僕たちに向かって来るのと再び攻撃を開始した『奈落のアメミット』から放たれる黒い炎を相殺している。


 場がかなり混沌としてきたが僕のやることは変わらない。

 ビニール袋からそれぞれのアイテムを取り出した。


 正直な所、これらを使えば何が起きてあの『奈落のアメミット』を封印出来るのかなんて全く知らない。


 だって試しになんて理由であの怪物を目覚めさせようだなんて一度も思わなかったからだ、正直このアイテムも保険として用意していた意味合いが強かった。


 探索者なら直ぐに出入りが出来てゴーレムなんて守護者までいるからこの場所に隠していただけだ。

 しかしこれで何とか出来ないとあんなのが地球に来るかもしれない訳で…。


「流石にそれは勘弁だよね…」


 僕は金色に輝く三個のアイテムを地面に置く。

 そしてダンジョンギミック発動のキーワードを口にする。


「……『異形と成り果てし神獣よ、その歩みはここで止まる、夜の闇を切り裂け、天空の神よ…黄金の光と共に今こそ出でよ!』」


 キーワードはこれで間違いないはず。

 一度も試したことないダンジョンギミックなので少し心配した、しかしそれは杞憂だった。


 僕の目の前の金色の像と剣とエンブレムが黄金の光となって上空に飛んでいった、そしてあの金色の像。

 隼の頭と人間の身体を持つその像が巨大化した、それは剣とエンブレムも同様に。


 『天空神ホルス』

 それが黄金の剣と円形の盾を持って黄金の光と共に本当に現れたのだ。

 『天空神ホルス』は更に背中から翼を生やして空を飛翔する。


 『天空神ホルス』は猛然と『奈落のアメミット』へと斬り掛かる、その黄金剣から金色の斬撃が放たれあの怪物の巨体に直撃、ダメージを与えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る