第18話 危険なダンジョンギミック
ダンジョン犯罪者は基本的に捕まって法で裁かれる可能性は低い、だって殺そうとして襲うから返り討ちに遭えば基本的に死ぬことになるからさ。
そこでダンジョン犯罪者側も少し考える、返り討ちにならない方法を。
その結果、単純に数を増やして犯罪組織みたいな物を作る輩が増えてきたのだ。
その方法とは駆け出しの下級探索者とかを力で脅して無理矢理犯罪行為をさせて自分たちと同じダンジョン犯罪者にするとかだったり、その方法にはパーティーメンバーを人質にして脅したりと様々らしい。
「もちろんそうなっていたらダンジョン犯罪者の仲間になる前に助けなくちゃいけない、人間は一線を越えるとどうなるか本人にも分からないからさ」
「はいっ必ず止めなくちゃ…」
まあこれなら生きている可能性は出て来た、今はそれだけでも希望があるからマシだろう。
幻影の足跡はオアシスから何処かへと向かって歩いて行ってる。
……ん?
「まさかこの方向って……」
「どうかしました?」
「……いやっ大丈夫、何でもないから」
実は内心かなり嫌な予感がしていたんだけど、そうと決まった訳でもないので僕は強がりを言った。
そして幻影の足跡を追うこと暫く、僕たちは何の変哲もない大きな岩山へとたどり着く。
「何もない場所に来ましたね…てっきり何処かの洞窟の入口とかに向かっているのかと思ってたんですけど」
「…………」
シュンとしている水希、しかし僕はそれに構ってる余裕はなかった。
嫌な予感はしてたけどまさかの的中だよ……。
「……不動さん?」
「水希、これを見て」
僕は水希に何の変哲もない岩山の傍の大きめの石を指差した。
特に特徴のある石ではない、その石の隣には青色の丸が岩山に描かれている。
「その石と青い模様が何か?」
「この模様は本来その隣の石によって隠されていた物なんだ、僕がその青い印を書いたんだけど…普通なら石に隠れてこの印は見えない筈なんだけど…」
「どう言う事です?」
僕は岩山の方に近づき、その表面に指を伸ばす。
確かこの辺に……あった。
表面の一部が四角くい形で奥に押し込まれる、すると岩山の表面が動いて秘密の入口が現れた。
「つまりね、この入口を見つけた輩がいるって事なんだよ…」
水希はかなり驚いたようだ、そして僕も驚いている。
何しろこの先には僕でも手を出していない…かなり危険なダンジョンギミックがあるだからね。
まさか、アレを利用しようと……?
だとしたら大変だな、そもそもどうやってここの存在を知ったのかも謎だし。
「水希、ここからはかなり危険な可能性がある。それでも行くかい?」
「はいっ皆を助けられるかも知れないなら、行きます」
「分かった」
僕たちは秘密の入口から侵入した。
その内部は以前の洞窟と違い明らかに人口的に四角い石を切り出してそれらを使った石造りの建造物の内部を思わせるものだ。
床も壁も天井も石である、通路自体はかなり広く進むのに問題はない。
代わりに身を隠せそうな場所もない、もっともそれはこの場所について何も知らなければの話し合いだけどね。
水希には足音をたてず話も出来るだけ控えるようにと言ってある、恐らくここにはダンジョン犯罪者がいることがほぼ確定してるからさ。
探索者が滅多に来ないダンジョン、それは連中からしても身を隠すのに丁度良い場所と言う事になる。
どういう横の繋がりがあるのか知らないが奴らはダンジョンに潜みながらも外との連絡を取る手段があり生活物資なども得ているらしい。
やはり金さえ用意すればダンジョン犯罪者相手にも融通を利かせる人間が日本にもいるって事なんだろう、情けない話だ…。
油断なくゆっくり進む、すると先の方から何やら音と気配がしてきた。
どうやら数人の人間がいて話をしてるみたいだ。
その事に水希も気づいた、先ずは様子を見ると耳打ちしてそろ~りと先の様子を窺う。
石造りの廊下の先はそこそこ広い空間となっているようだ。
そこに無造作に積まれてる段ボール、恐らく食料やら飲み物、そしてそれ以外にも必要な生活物資だろう。
そしてそれらの近くには服装こそ現代の者だが手には刃物、それに社会人には似つかわしくない防具まで身に着けている。
年齢は四十代中頃の黒髪黒目、日本人か別の国のアジア系なのか…。
ともかく連中はヘラヘラしながら何か会話をしていた。
「ここでの生活も飽きたな」
「仕方ねぇさ、ダンジョンを出たら俺たちほぼ死刑だぜ?」
「違ぇねぇ…しっかしボスは本気であんなのを使う気なのか?」
「ああっ何でもアレは目覚めさせたヤツの忠実な僕になるらしい、ボスはヤツを使って国を手に入れるつもりなのさ」
「おおっこわっ」
「そしたら俺らもダンジョンで隠れ住む必要も無くなる、地上で好き放題に出来るって訳だ!」
「そいつは楽しみだな~~」
「…………」
「…………」
うんっ分かってはいたけど連中は間違いなくダンジョン犯罪者だ。
しかも連中の会話の内容によると僕の嫌な予感も的中してる模様、これはシャレにならないぞ。
「不動さん……あれっ!」
水希が荷物の山の向こうを指差す。
そちらに視線を向けると数人の探索者が気絶していた。
それは水希の友達で元パーティーメンバーの高校生たちだった。
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