第17話 ダンジョン犯罪者
魔法陣によって見渡すだけでも億劫になってくる広い砂漠へと到着した。
相変わらず陽射しはとんでもなく強く、飲み物がないと小一時間もあれば干からびてしまいそうな暑さだ。
まずは前回と同じクールタブレットを口に入れる、念の為に飲み物と食料を入れたリュックサックを用意してきた。
何が必要になるか分からないからね、素人なりに用意出来る物は用意しておきたかったんだ。
水希とは事前に探索する場所についてあれこれと話はしている、効率的にダンジョン内を見て回らないといけないからね。
「それじゃあ先ずはこのダンジョンでも下級探索者が主に探索するエリアを目指そう」
「はい」
彼らだってちょっと前に死にかければ少しは慎重にもなるだろう。
更に水希と組んでる時は一度も行かなかったダンジョンに向かうのならいきなり上級探索者パーティーが向かうような場所に行かない筈だと予想したんだ。
この【エルマドン砂海】にだって弱いモンスターが主に出て来るエリアはある、その辺りを中心に痕跡をさがそうと思う。
一応だがギルドにも探索者が行方不明となった場合、それを捜索する為のノウハウをまとめた情報サイトとかもあるのだ…水希に教えられるまで知らなかったけどね。
そこから応用出来そうなのを幾つか目をつけてここに来た。
先ずは危険エリアを避けながら探索者パーティーの痕跡を追おう…である。
まず向かうのはストーンヘンジっぽい場所から南に向かった所にあるオアシスだ、そこにはそこまで強くないモンスターが多くいるのでこのダンジョンに来たらまずそこで腕試しをするのが【エルマドン砂海】の探索の第一歩なのだ。
……ただここは殆どの探索者が一度も探索にこない事でも有名だからオアシスに到着しても人どころかモンスターもいなかったけどね。
「本当に誰もいませんね…」
「そうだね」
多分依頼を受けた探索者パーティーが一つもないのではないかな、或いはもっと先を既に捜索しているとか。
まあ変に期待すると後でガッカリする事になるかもなので余計な事は言わないでおこう、先ずはここで痕跡を探そう。
僕はリュックサックから捜索に使えるかもと思って持ってきてたアイテムを取り出した。
「不動さん、それは一体なんですか?」
「これはダンジョンから得られるアイテムの一つで幻影の足跡を出現させるんだってさ」
僕が取り出したのは栓をされたガラスの小瓶だ、栓を抜いて中の液体を下の砂に流す。
すると緑色の光が僕たちを中心にゆっくりと広がっていった。
その光が集まり光って見える場所が幾つかある、これが幻影の足跡なのか。
「凄いですね、光が人間やモンスターの足跡を作ってます。本来ならもう見えない筈なのに…」
「そう言うアイテムだからね、本来は大型モンスターを追うためにその痕跡を探たりする事に使われるアイテムらしいよ」
基本的に約十日間以内の足跡だけに反応するらしい。
しかしここで気になる事が分かった。
本来ならオアシスといってもこのダンジョンには探索者は殆どこない。
それなのに緑色の光はモンスター以外の足跡をかなりの数形作っているのだ、これはこのオアシスにここ数日間で大量の人間がいた事を示している。
更に……。
「あの、この足跡って大人数で数人を囲ってる様に見えませんか?」
「……そうだね」
見ると輪っかの様に足跡がありその輪っかの真ん中に数名の物と思われる足跡が目立った。
確かに水希の言うとおりかもしれない、探索者のパーティー同士がここでケンカでもした?
いやっ多分違うな。
少し嫌な予感がしてきたぞ。
「もしかしたらこのダンジョンにダンジョン犯罪者が巣くっているかも知れないね…」
「ダンジョン犯罪者? それは一体…」
「探索者の中にはダンジョンでの犯罪行為を好んでする連中がいるんだよ、ソイツらの総称って所かな…」
ダンジョン犯罪者、要は探索者の犯罪者だ。ダンジョンの中は基本的何が起きても外の人間に感知される事は殆どない。
それを悪用して他の探索者を襲いレアなドロップアイテムだったり装備を奪い、更には口封じで命まで奪う事までするとんでもない連中だ。
もちろん中にはソイツらを撃退したり逃げ延びた探索者がいてその存在を明るみになると上級探索者による討伐とかの依頼も出たりした過去がある。
ダンジョン犯罪者は人間ではなくモンスターとして処理しても法的に何も問題もないとされる存在なのだ…本当に大丈夫なのかな?
「多分、水希の友達はそのダンジョン犯罪者たちに襲われた可能性がある」
「そっそんな……」
ダンジョン犯罪者に襲われれば基本的に口封じに命を奪われる。
しかし今の時代のダンジョン犯罪者はそれ以外の可能性もあった。
「或いは…共犯者にする為に攫ったかも知れないね」
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