第15話 失踪
クズギルド職員とのあれこれから一ヶ月程経った、相変わらずダンジョンギミックを使って探索者活動を僕は続けていた。
「水希、頼める?」
「はいっ!」
僕たち二人が対峙するのは四体のレッドスライムだ。
赤というよりははオレンジ色に近い体色をしたプルプルしてるモンスターたちである。
ヤツらは炎系のスキルを使う。
炎の玉を出現させ、僕たちに向かって発射してきた。
それを水希のスキル『水精使役』と『水操作』のコンボで水の壁を出して相殺する。
その間に僕はダンジョンギミックを発動させる。
事前にレッドスライムたちは狙ったエリアに誘導済み、僕は水希の背後に移動した。
そこには台座の上に右手に槍を手にしたゴブリンの石像が置いてあった、そのゴブリンの右腕がレバーのように動くのだ。
その右腕を下から上に上げる。
するとレッドスライムたちが立っている地面から無数の槍が出現してスライムたちを滅多刺しにした。
レッドスライムたちは全滅、その全てが魔石となる。
あっオレンジ色の四角い塊がドロップした!
「あっレッドスライムゼリーです、ドロップアイテムですね」
「なら回収しようか」
僕たちは【石壁の魔宮】にてコツコツ魔石を稼いでいた。
水希の家は結構お金持ちなのかと思ったら自分が探索者として活動する為の資金は自分で稼ぐのを条件に探索者になったそうなので余裕はそこまでないらしい。
僕も日々の糧と探索者活動に必要なアイテムの数々を確保する必要がある、要はお金は幾らでもいるんだ。
ということ訳で今日も今日とてコツコツ魔石を集めてお金を稼ぐのだ。
魔石とドロップアイテムの回収を終えたタイミングで水希が話しかけてきた。
「不動さんこの後少しいいですか?」
「別にいいけど」
ダンジョンの中は物騒だがゲームみたいに少し歩けばモンスターとエンカウントっと言う事は早々ないので回りへの警戒は怠れないが話くらいなら出来る。
いつもは明るく話す水希だが今日は少し勝手が違っていて何か悩んでいる様子が見てとれた、そして話を聞いてみると…。
水希の元パーティーメンバーの話だった。
「……えっ学校に来てない?」
「はいっパーティーは抜けたんですけど学校では普通…よりは距離を置かれてたんですけど」
そりゃあパーティー抜けたらね、けどその理由に僕が関係してるのであまり触れない方がいいのかな。
「休んでるんだよね? それとも…」
「少し他のクラスメイトに教えてもらったんですけど、多分日曜日にダンジョンに行ってそれから帰って来てなくて…」
一日や二日くらいなら普通に休みだと思っていたらしい。
しかし水希も三日目を過ぎたあたりから変かもと思い他のクラスにいるパーティーメンバーに話を聞こうとした。
そこで元パーティーメンバー全員が学校に来ていない事を始めて知ったらしい。
成る程ね、それで今日学校終わりの彼女からダンジョン探索をと誘われた訳か。
「それなら普通にギルドで会ったに相談してくれれば良かったのに…」
「すみません、私の中でもまだ全然整理出来てなくて…」
「それも仕方ないよ」
水希は助けたとはいえ会って間もない僕の為にあれこれと動いてくれる程に優しい人だ、普通に学校で仲が良かったであろう友達の身を案ずるくらいするだろう。
仲良しじゃないと普通はパーティーとか組まないしね、そんな皆が行方不明か…。
ダンジョンで行方不明となると警察とかは絶対に動かない、それは探索者になる時に渡される数枚の契約書にも記載されていた。
ダンジョンでの事は基本的に自己責任だからだ、だって電子機器は全て使えないから証拠映像とか残せないからね。
つまり親御さんとかに出来る事はお金を出してその行方不明となった探索者の捜索をギルドや知り合いの探索者に依頼するくらいしかない。
「…成る程、依頼ですか」
「ギルドに問い合わせをすればどこのダンジョンにむかったのかくらいは分かるからね」
探索者には事前にどのダンジョンに向かうのかをギルド職員に報告する義務がある、もちろんこんな時の為にだ。
「分かりました、ギルドの職員さんに話をしてみようと思います」
「それがいいよ。出来る事が何かあったら遠慮なく言って欲しい」
「……いいんですか? 皆は不動さんに…」
「高校生がした事だし、そこまで目くじら立てる程の事じゃないからね」
ちょっと虚勢を張った、ホントは未だにムッと思っているとも。
けどそれを理由に見捨てればそれはクズギルド職員から助けてくれた水希に対しても不誠実となる、それは避けたい。
それに行方不明とかってやっぱりほっておけないよ、多分助けられるとしたら同じ探索者だけだろうからね。
そんなやり取りを経て水希と共にダンジョンを出る。
ギルドに戻った僕らは適当なギルド職員を捕まえて事情を説明、部外者ではあるがある程度教えられる情報を得て帰路についた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます