第14話 一件落着

 クズギルド職員は何やら言い訳をしていたが水希の知り合いらしきギルドの偉い人は笑顔のまま指をならした。


 すると黒服を着た警備員よりも強そうか人が左右からクズギルド職員を挟んで連行していく、ギルドの偉い人は水希と僕に会釈すると去って行った。


「………どゆこと?」


「はいっ実は…」


 水希が説明してくれた。

 何でも彼女の母のお父さん、つまりは水希のお爺ちゃんがあのギルドの偉い人の元上司に当たる今でもかな~り偉い人なのだそうだ。


「あっ他のパーティーメンバーだった皆には内緒にしてたんですけどね、変に意識されても困りますから」


 そりゃあ意識するなってのが無理だと思うよ、僕も探索者なわけだし。

 そしてそんなえら~い人の孫娘である水希の命の恩人がギルド職員に迷惑をかけられてるかもっと相談をしたのが昨日の夜。


 お爺ちゃんの行動は速かった。

 水希にあれこれとアドバイスをしてこのギルドの責任者を捕まえてあれこれと注文したらしい。


 その結果がクズギルド職員連行というあの結果である、権力って凄い。

 孫娘可愛がりのお爺ちゃんも凄い、ある意味スーパーマンだよ。


 そのおこぼれにあずかった形ではあるが、僕は彼女に助けられたって訳だ。


「お爺ちゃんが言ってましたけど直ぐにギルドの方からこれまで買い取りで中抜きされた金額とかも直ぐに用意させると言ってましたから」


「あ……ありがとう」


 なんと言えばいいのか、最初に会った頃と立場が逆転してる。

 こういうのってこの前助けた事でチャラなのかな?

 よく分からない、分からないが…。


 僕は他のギルド職員がバタバタと用意した今日の分の中抜きしてた分のお金を受け取り、水希に提案した。


「今日はこれで何か奢るよ」


「本当ですか!? ありがとうございます!」


 ギルドの中には探索者も一般人も利用出来る食堂があるので向かった、僕に出来る事なんてこのくらいだよ。


 その後、無事に帰ってきたお金は五百万以上だった。

 あのクズギルド職員…どれだけ中抜きをしていたんだ?


 説明された話によるとあのギルド職員は【異界の大回路】に常にいる警備員を買収して僕が戻ってきたら連絡を入れさせていたらしい、だからいつも僕が戻ったタイミングで受付にいたそうだ。


 そういえば水希が少し警備員を見ていた気がする、それに彼女は気付いてたのかもだ。


 そしてやたらと昇級試験を受けさせなかった理由は中級探索者になるとその探索者活動がギルド内でも自身より上の人間がその内容を知られるらしい。


 そうすると中抜きしてる事実がバレるから阻止していたんだとか、本当にどこまでも自己中心的な理由で人に迷惑掛けてただけだとは…ある意味凄いおっさんだ。


 ちなみに僕みたいにヤツに目をつけられ、ある意味寄生されて昇級なり探索者活動なりを邪魔されていた探索者は他にも数名いたらしい。


 そしてあのクズギルド職員と結託していたギルド職員も結構いたとか、ソイツらは多分僕がクズギルド職員以外に受付してもらいに行ったらわざわざクズギルド職員に交代した連中だろう。


 そんな感じでダンボールのミカンが一つ腐ってると思ったら他のミカンも腐ってましたねって事で存外大事となる事件になった。


 まっ組織の外にいる僕には何がどうなったのか知る由はない。

 分かる事はあのギルド職員を含め十数人のギルド職員が別の人間と入れ替わり二度とギルドで目にする事がなくなった事と、僕を含め昇級試験を受けたくても受けられなかった探索者たちが無事に試験を受けられるようになった事だ。


 もっとも僕と似たような境遇の探索者はその実力自体は他の中級探索者以上な人が殆どだったらしいけどね。


 いずれ行われる試験に合格すれば僕も晴れて中級探索者になれる。

 何気に嬉しい、本来探索者ってここからがスタートラインとかって言われてるからね。


 ……ここまで来るのが本当に長かったよ、て言うかあのおっさんと言うつまらない大人に足を引っ張られたお陰でかなり人生を無駄にした気がする。


 しかしその時間が返ってくる事はない、もっと言えばあのおっさんギルド職員の事をこうやって思い出す時間のその一分一秒が無駄でしかないのだ。


 と言う訳でこれからはつまらない事は出来るだけ思い出さないようにして前を向いて歩いて行こう。


 ……まっその昇級試験自体はまだ行われるのは先の話なんだけどね。

 まるで直ぐ試験があるみたいにこれまでを振り返ってしまった。


 そんな事をしていると見知った人間から声をかけられる。


「不動さん? 今日もダンジョンに入るんですか?」


「水希…うん、そうだよ生活費を稼ぐ必要があるからね」


「それはら私も一緒にいいですか?」


 何故?

 もしかして心配されてる?

 僕の方が年長者なのに…。

 そんな事を気にする僕に彼女は笑顔で話を続ける。


「不動さんには助けられたのもありますけど、これまで全く知らなかったダンジョンギミックについて知れてもっと知りたくなりました…だからまたついて行きたいんです!」


「…ああっもちろん」


「ありがとうございます!」


 そんな訳で僕たちはダンジョンにまた向かうのだ。

 水希にはまた面白いダンジョンギミックがあるダンジョンに連れて行ってみたいね。

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