第9話 ドラム式洗濯ー!
黒曜石サソリ自体とは会った経験はない。しかしこの【エルマドン砂海】には何度も来てモンスターを倒してる。
……まあ黒曜石サソリ並のモンスターと戦った事はないしね、だからこそコイツの魔石を持って行って昇級試験を受けさせろとあのギルド職員に直談判するのだ。
それはともかく、とにかく硬くて身体が大きなモンスターが相手なら利用するダンジョンギミックは決まっている。
ダンジョンギミックは何処にどんなのがあるか、それを理解しとかないと話にならない。
そこで僕は水希を連れて洞窟内を移動してその場所に行く。
洞窟を進むと一気に通路が広くなり天井も高くなるひらけた場所に出た。
見た目は自然と出来ましたよって感じの洞窟な空間だ、しかしここには本来探索者を仕留める為のダンジョンギミックが隠されている。
「ここにダンジョンギミックがあるんだ」
「ここにですか?」
「そうっこっちに来てみて」
場所は空間の端っこ、なんの変哲もない岩の壁。
そこに平たい岩が幾つか重なっている場所があった、その一番上の岩は丁度腰を下ろして休むのに丁度いい感じの高さにある。
「ほらっこの真ん中辺りをよく見てみて、岩と同じ色だから分かり難いけどボタンがあるでしょ?」
「…あっ! ほ、本当ですね」
「ここに腰を下ろすとこの通路の真ん中に大きな魔法陣が出現してその魔法陣の中に探索者かモンスターが入ると一瞬で塵になるからね」
「こっ怖いですね……」
「ダンジョンギミックは本当に危険な物が多い、今後ダンジョンを探索する時はダンジョンギミックの情報も集める事をお勧めするよ」
僕の言葉を緊張した面持ちで聞く水希、情報が武器になるのは社会もダンジョンも変わらないんだ。
「このダンジョンギミックならまず間違いなく黒曜サソリも倒せると思う」
「……後はここにどうやってそのサソリをおびき寄せるかって訳ですね?」
「その通り、ダンジョンギミックは基本的に動かしたり出来ないからね。なかなか楽はさせてはくれないんだ」
「ふふっそこはダンジョン探索者の腕次第なんですね」
全く以てその通りだ。
僕たちはその後洞窟内を黒曜サソリを探して移動する。
途中にサンドアント、砂色をした大型犬くらいあるアリと戦闘をした。
ここで事前に説明だけは受けていた水希のスキルを確認出来た。
彼女の持つスキルは『水操作』と『水精使役』である。
『水操作』は本来水がない場所だと使えないスキルだ、しかし『水精使役』で力を借りられる水精は大抵の場所で水を生み出す力を持っているので水希の『水操作』は砂漠でも使えた。
「ドラム式洗濯ーーー!」
「…………」
先ずは水精、手の平に乗りそうな青い半透明なクラゲが回りに水を生み出していく。
そして彼女の『水操作』によって宙に出現した大きめの水球がサンドアントの身体を包み込むと、なんと身体を浮かせられるらしい。
そしてそのサンドアントたちをまとめて大きな水球を形成し、その中に閉じ込める。
そしてその水球の中身を水希が言ってる通り洗濯するかの如く物凄い勢いで回し始めた。
しばらくすると溺死したのかサンドアントたちは光となり魔石になった。
「……なかなか凄いスキルの使い方だね」
「魔法使いっぽいですか?」
魔法使い……ぽくは無かったかな。
まあ口にしては言わないけど、取り敢えず曖昧な作り笑いをしておこう。
水希が問題なく戦える事も分かったし、あの水をかなり自由に操れるスキルのコンボはとても優秀だ。
もしかしたら今回のサソリ狩りは彼女のスキルに助けられるかも知れない。
そんな感じるでモンスターとの戦闘や他にもちょこちょこあるダンジョンギミックとその効果や発動する条件などレクチャーしながら探索すること暫く。
洞窟の奥まで来た僕らはこれまでと違う雰囲気の場所に出た。
そこは赤茶色の岩の床や壁から所々黒い水晶の様な鉱物が出現している何とも幻想的で不気味な光景だった。
「……不動さん、ここは」
「うんっ恐らくここが黒曜石サソリのテリトリーなんだろうね」
むしろここで黒曜石サソリが出て来なかったら何処に現れるのかって話だよ。
「さてっここからあの場所までヤツをおびき寄せるか……」
「流石に無理があるんじゃ?」
「確かに、あの場所からここまで移動だけでも十数分以上はかかる。探索者の足で走れば数分くらいだとしてもかなり離れてるからね…」
僕は頭の中で作戦をイメージする。
水希の『水操作』で何か黒曜石サソリをおびき出せる疑似餌を作ってもらって……。
………まっその後はダッシュでいけるかな?
探索者は最終的には体力が物を言う仕事なのさ、多分走れば何とかなると思う。
「水希、一つ聞きたいんだけど…」
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