第8話 エルマドン砂海
魔法陣の上に立つ、すると視界が一変した。
白いレンガ造りの荘厳な神殿を思わせる場所から雲一つない青空と太陽そして何処までも広がる砂漠と岩山ばっかりの世界へと僕たちは来ていた。
「ほっ本当に来たんですね、あの探索者から嫌われるダンジョンとしてある意味有名な【エルマドン砂海】に…」
「そっ競合する相手がいないのが一番大事にしてるだよね僕は」
ダンジョンは地球とは少し事情が違う環境設定をされている。
例えばこの砂漠だと何時間経とうとあの空の太陽が沈むことはなかったりするのだ。
ず~とあの太陽に照らされるとか、確かにキツすぎるに決まってる。
だから他の探索者を殆ど見かけない。
だからこそダンジョンギミックを使ってモンスターを遠慮なく倒せるって訳だ。
一応、水希には話したけど飯の種は隠しておきたい事ではあるからね。
今僕たちがいるのは砂漠にポツンと存在するストーンヘンジみたいな場所の中心にある魔法陣の上にいる。
戻る時はこの魔法陣に乗ればいい。
「それじゃあ探索を開始しますか」
「分かりました!」
「と言う訳で先ずはこれを飲んで」
僕はポケットから取り出した小瓶の中の青いタブレットを水希に渡した。
先ずは僕が飲む、水は必要なく噛み砕けば良い。
タブレットを噛み砕くと周囲の暑さと太陽の陽射しが緩和されるのを感じた、水希も同じ様にするとその変化を実感したのだろうかなり驚いている。
「これはクールタブレット、こう言う暑さが厳しい環境のダンジョンでも活動がし易くなる為のアイテムだよ」
「そんなのがあるのは聞いた事ありましたけど、こんなに効果があるなんて知りませんでした…」
「まあ安くもないからね、普通は必要ないダンジョンに行けばいいから」
こう言うアイテムもダンジョンから得られる資源で作られるらしい。
モンスターの魔石やドロップしたアイテムでと説明されても僕には何をどうしてるのかさっぱりだ。
「まず僕がこのダンジョンに来た理由だけど、一番は競争する相手がいないダンジョンだから、そしてもう一つは僕もそろそろ中級探索者になろうとしてるんだ…」
「前にバジリスクから助けられた時は驚きました、てっきり上級探索者だと思ってましたから…」
「なかなかソロだと昇級試験も受けさせてもらえないみたいでね、バジリスクやそれと同格以上のモンスターの魔石を何年も持ってきても実力が足りないの一点張りさ…」
水希が「え? 何でですかそれ…」と疑問に満ちた顔をする。
僕もそう思うよ、けどギルド職員と揉めても仕方ないと諦めてる部分もある。
しかし昇級試験までは諦めないけどね。
探索者は昇級すればモンスターの魔石の買い取り価格だったり国の税金とかにも優遇措置がある、貧乏とまでは言わないが昨今の物価高騰に僕のお財布はノックアウト寸前だ。
探索者がダンジョン探索で必要とする物ってどれも基本的に割高だからね、本当にお金で安全を買ってる気分だよ。
そんな感じだから今後の生活を踏まえると何とか中級探索者になりたい僕な訳だ。
その辺りを水希に説明し終える。
「……何というか世知辛い話ですね」
「ダンジョンでモンスターを倒せても、どうしょうもない敵もいるって事だよ。さっ何はともあれまずは移動しようか」
僕たちは魔法陣とある場所から移動を開始した。
流石にダンジョンギミックも見渡す限り砂漠しかない場所には殆どない、そこで目指すのはその砂漠に点在するまるで要塞の様な赤茶色の岩山である。
幾つもある岩山は大抵はただの岩山だ、しかし中には人間が問題なく通れる長く入り組んだ洞窟が出来ていたりする。
僕たちはそんな洞窟を見つけて侵入する。
「日陰が出来るだけで体感気温が変わりますね」
「タブレットを使ってもやっぱり暑いのは暑いからね」
「そう言えばこの【エルマドン砂海】ってどんなモンスターが出て来るんですか?」
「サンドアントとかデザートリザード、他にはイエローラプトルかな。たまに大型のモンスターも出るからね」
基本的な顔ぶれは小型のモンスターばかりでそんなに変わる事はない、しかし大型モンスターは結構種類が多くて一言では説明出来なかった。
「そして今回僕たちが狙うモンスターは……」
「狙うモンスターは?」
「黒曜石サソリってモンスターだよ」
「聞いた事もないモンスターです」
僕も本物を見た事はない。
集めた情報を水希に話す、黒曜石サソリは全身が黒曜石の様に黒く艶がある巨大なサソリ型のモンスターでその全長は八メートル近くあるまさにモンスターなサソリらしい。
更に先端に毒針を持つ尻尾が二本ありハサミは人間くらい真っ二つに出来るくらい大きくゴツい、全身が硬く武器攻撃でもスキル攻撃でもなかなか倒せないモンスターである…らしい。
「話だけだと二人で倒せそうな気配がまるでしませんね」
「まあね、そこで利用するのがダンジョンギミックって訳さ」
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