第7話 魔法使いスタイル
「お待たせしました」
こちらに来た水希の装備は探索者の間で魔法使いスタイルと呼ばれる物だ。
小説の魔法使いが持ってそうな杖とマントを動きやすそうな服装の上からしている。
流石にローブだと動き難いからそこまではしていない。
とんがり帽子も流石にない、以前バジリスクの時と同じ格好をしていた。
僕はもう一度この水希と言う子を観察した。
少々くせっ毛の明るい亜麻色の髪を後ろで束ねている、瞳は緑色で綺麗系より可愛い系の少女だ。
正直探索者なんてモンスター戦ったりダンジョンを探索するなんてのを好みそうな印象は受けない。
けどその辺りの理由なんて本人次第だから知りようがないし、僕も下手に深入りするつもりはない。
探索者はお互いのプライベートに無闇に踏み込んだりしないものだ。
パーティーなんて殆ど組んだ経験ないけど、多分そんな物だと僕は思っている。
「それじゃあ探索の打ち合わせをしながら行こうか」
「はい」
「…まず今から行く予定のダンジョンだけれど、そこは僕が決めても?」
「いきなりパーティーを組みたいと言ったのは私ですから、予定は不動さんのを優先して下さい」
そしてお互いの所持するスキルや探索者としての能力、そして今回のダンジョン探索で何を目的に行動するのかを話し合っていった…。
床は白い大理石の廊下、壁は白いレンガ造りの荘厳すら感じるまるで神殿とかの中を歩いてる気分にさせる場所。
この【異界の大回路】は日本だけでなく世界中に存在する。
そこに存在する開かれた門の先には左右に石版が列を成して鎮座していてその石版の列を抜けた先には青い魔法陣がある。
その魔法陣から僕たち探索者はダンジョンに行くのだ。
ちなみにその手前の石版にはまるで象形文字のような物が刻まれていて、一定期間でその模様の様な文字が入れ替わったりする。
それらを解読しようと日本だけでなく世界中の学者は日夜頑張ってたりするのだが…。
「ぶっちゃけるとそれを解読出来るスキル『迷宮文字解読』が僕の探索者のスタイルの鍵なんだよね…」
「そんなスキルがあるんですね」
ほえ~と驚く水希、まあスキルなんて本当に色々種類が在りすぎて全てを把握するとか無理だしね。
正直な話、僕の持つスキルはどれも戦闘向きじゃない。
探索者は一般的にダンジョンでモンスターを倒して、モンスターからごく稀にドロップする事があるスキルカードを使用する事で始めてスキルをゲット出来る。
けどそんなスキルガチャで中々当たりなんて引けないのさ、僕みたいに…。
けどどんなスキルも使いよう、僕は幾つかある戦闘に不向きなスキルを使ってダンジョン探索を円滑に進める方法を見つけた。
「実はこの石版にはそれぞれの石版が置いてあるダンジョン、そこに存在するダンジョンギミックについて詳しく記されているだ」
「ダンジョンギミック? あのトラップとかですか……」
「トラップだけじゃないよ、あのバジリスクを倒したヤツね。あれも実はダンジョンギミックを利用させてもらったんだ」
僕と一緒に探索する以上、ダンジョンギミックとその利用について隠すのは無理だ。
なら余計な誤解が生まれる前に話すのが一番良い、一緒に探索する以上余計なすれ違いは身の危険に直結するからね。
「僕には他に『記憶保存』ってスキルを持ってる、自分が忘れないと決めた内容を決して忘れない様に脳内に保存出来るんだ、そのスキルのお陰であの膨大な量の石版を解読した内容を覚えられる」
まっそれ以外にはあんまり役に立たないスキルだけど。
「凄いスキルですね」
「イヤ全然……ともかくその二つのスキルのお陰で僕はダンジョンギミックについて詳しくなれた、そのお陰で今日まで探索者として生きていられるんだ」
そうこう話をしてる内にダンジョンへ行ける魔法陣へと到着した。
ちなみに他の探索者の姿はない。
普通なら他にも探索者パーティーが何組かはいるもんなんだけど…。
「他の探索者はいないんです?」
「このダンジョンはある意味で有名だからね」
「………有名?」
「そうっあんまり現代っ子には厳しい環境って所で」
僕の言葉に水希さんの目が点になる。
そっこれから向かうダンジョンは探索者から敬遠されてるダンジョン……。
熱砂の大砂漠が広がるダンジョン、【エルマドン砂海】である。
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