第6話 水希桜子
そして翌日、ギルドを訪れた僕はそのギルドの地下へと続く白い大理石の階段の前に立っていた。
横幅も長く人間が十人くらいは余裕で並べそうな大きな階段だ。
この階段を下に降りるとダンジョンへと行けるとある場所に繋がっている。
そんな大理石の階段の前にて僕は話しかけられた。
「すいませーん」
「えっ…僕ですか?」
振り返るとそこには昨日、訳の分からない話をでっち上げていたと言う高校生探索者のパーティーにいたあの女の子の探索者が立っていた。
最後までバジリスクに石化されなかった子である。
「…………君は、昨日の?」
僕は何か言う前に彼女は「本当にすみませんでした!」と言って頭を深く下げた。
一体どういうことなのかと思い少女の話を聞こう。
「えっと…まずは話を聞かせてもらえる?」
「はい…」
そして彼女、
お互いに自己紹介を済ませて話をし始める、その内容はあのギルド職員が本当の事を言っていた事を肯定する内容だった。
つまりあの高校生探索者パーティーは自分たちがバジリスクを弱らせて僕はその獲物を横取りした云々と言っていた。
そんな話をギルドだけでなく学校でも吹聴しているのだそうだ。
この水希って子がいうには何度止めても話を聞いて貰えなかったらしい。
まあダンジョンの中に監視カメラなんてない、人数が多い方が声を大きくして喋り出した内容を真実だと考える人数は何処にでもいるからね。
その状況に彼女は我慢ならなかったらしく、遂にはそれ以上デタラメを広めるならパーティーを抜けるとリーダーの男子高校生に言ったそうだ。
その後は売り言葉に買い言葉よろしく、本当にパーティーを抜けてしまったとのこと。
「………えっ本当にパーティー抜けたの?」
「ええっ皆もっと気の良い人たちだと思ってたんですけど、これ以上ついて行けないと思ったんです」
まっまあそこは見過ごせる人間と無理って人間がいるだろうからその判断はこの子の自由だけども…。
「それで、君は一体何の用があって僕に話を?」
「はいっそれで厚かましいのですが、一緒にパーティーを組んでもらえませんか?」
「パーティーか…どうして僕と?」
「元とはいえパーティーを組んでいた皆がした事ですから、迷惑をかけてしまった分でも何とか埋め合わせを…」
妙に律儀なのか、それとも他の高校生探索者たちが彼女に何か吹き込んでまだ僕に絡んで来ようとしてるのか、僕には判断出来ないだよな…。
僕は学生のこの子らと違い、生活するのにお金を出してくれる親はいない。
いやっ親はいるけどもう独り立ちしてるからね、だから日々のダンジョン探索には生活がかかっている。
正直あの高校生たちとこれ以上関わって探索にさく時間をこれ以上減らしたくないし精神を無駄にイラつかせたくもないのが本音だった。
…けど普通にこの子が迷惑をかけた事を気にしたと言う言葉を嘘だとも思いたくもないしな~。
僕は少し悩んだ。
「……………ふうっ」
まあいっか。
ここは騙された思ってこの子を信じてみよう、疑い過ぎても結局は僕の気分が害されるだけだし。
「パーティーを組むのは良いけど、それならお互いのスキルセットや探索スタイルの確認をするけどいい?」
「はいっ分かりました、よろしくお願いします不動さん」
「それなら階段をおりてゲートを越えたらまた合流しよう」
僕の言葉に彼女、水希が頷いた。
階段を降りるとそこには左右に警備員が立っていて、空港とかにある金属探知ゲートみたいなのがあった。
これを越えると廊下の先にロッカールームがある部屋が幾つかある。
その一つに僕たち探索者は装備品なりを入れてあるのだ。
最も武器や防具が殆どでそれ以外の、例えばバジリスクリングみたいなのは本人が所持してる。
盗難とかあったら困るからだ。
そこで装備を整える。
僕は防具なんて肘当てと膝当てくらいで後は黒を貴重とした隠密効果を付与する装備を愛用している。
基本的にダンジョンギミックにハメて敵を倒すだけなので軽装で十分だからだ。
そしてロッカールームから先に向かう、そこからは装備を着込んだ探索者たちがチラホラと目立ち始める。
ここからはファンタジーな世界となる、僕たち探索者が【異界の大回廊】と呼んでいる大きく長い廊下と左右に幾つも並ぶ開かれた門があった。
このなが~い廊下も真っ直ぐ行くと突き当たりには開けた空間があり、そこにはとある物があるのだが…。
あっ来たね。
その大きな廊下の片隅で待つこと少し、装備を整えた水希が現れた。
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