第5話 ウソだろ?
そしてその日のダンジョン探索を終えた僕は、ギルドに集めた魔石を換金してもらっていた。
その相手はこちらが頼んでもいないのに毎度出て来るあの嫌な感じの男性職員である。
その職員はこちらに換金したお金を渡す、相変わらず少し少ない気がする…。
すると職員はおもむろに口を開いた。
「…不動さん、少しいいですか?」
「はいっ何です?」
「実は今日、どうも不動さんらしき探索者に獲物を横取りされたというパーティーから苦情が来てるようなんです」
「は? 獲物を横取りされた…?」
意味が分からなかった。
しかし心当たりがあるとすればあの高校生パーティーくらいしかない。
だが獲物を横取りとはどういうことなんだ?
「探索者パーティーを助けはしましたが、そんな真似をした覚えはないですけど…」
「何でも自分たちが倒そうとしていたバジリスクが弱ったところで現れてトドメをさし、トドメをさしたのは自分だからとその魔石を寄越すように言ってきたと……」
「………………」
僕は思わず無言となる。
あの高校生たちよ…ウソだろ?
よくもまあそんなデタラメを言えたもんだな、話をでっち上げるにも酷すぎるだろこれ。
恩は仇で返すとかそんな生易しいレベルじゃないな、後ろ足で砂をかけて振り返り中指を立ててあっかんべーされたくらいか?
あまりにもあんまりな話に流石の僕も顔が引きつるのがわかった。
それでも何とか口を開いて話をする。
「……正直、その探索者たちの言ってる内容については理解できません」
「そうなんですか?」
「はいっ五人の探索者のパーティーのうち四人がバジリスクに石化されていた高校生くらいの探索者パーティーがいました。 それを助けてバジリスクを倒したのは記憶にあるんですが…」
「…………」
「そしてその後は石化された探索者たちを石化から解放した事ならしましたけど…」
「君がバジリスクをねぇ…例のダンジョンにあるわけのわからないトラップとかを使ってですか?」
「そうですよ」
て言うかこのギルド職員、付き合い自体はもう五年にはなるしバジリスクの魔石を持ってきた事なんか一度や二度じゃないだろ。
物事を記憶することができない病気かなんかだとでも言うのか?
ただでさえその探索者パーティーにイラついてるのにこの職員にもイラついてしまう自分がいる。
「バジリスクの石化を解除するアイテムなんて持ってるんですか?」
そこに食い付くんかい。
「ええっまあ…」
「それを見せて貰っても?」
「換金する気がない物を見せる必要はありませんよね?」
なんとなくこの職員に渡すと嫌な予感がしたので断る。
ハッキリした理由はないけど…なんか偽物とかとすり替えられそうな気がしたのだ。
「……まあいいです、そちらの言い分についても分かりました。やはり君自身が実力をつけてもらうのが一番手っ取り早い解決方法ですね」
コイツもウソだろ?
「いや実力云々というより探索者カードが青かったからのが信用されなかった原因でしたから、いい加減中級探索者の試験受けさせてもらえませんか?」
「駄目ですね、はっきり言って貴方にはまだまだ早すぎる、もう少し実力がついてからだと何度も言ってるでしょ?」
「……………」
僕は再び無言になる。
だからさ僕の実力が足りてるか足りてないかを赤の他人のギルド職員であるアンタにどうこう言われる筋合いないんだよ。
何年も探索者してるんだからそれくらい自己責任でしょ。
そもそもダンジョン探索者自体ほとんど自己責任だから、禄な保険もないのに人間を殺して食おうというモンスターがモリモリいるような場所に出入りしてるんだからさ。
実力のない人間?
そんなのは探索者になって一年もしないで大怪我を負って引退をするかダンジョンから帰ってこなくなるからね。
僕はダンジョン探索者になって五年くらい経っているだろう。
十五歳の時に探索者になってもう二十歳だ、本当にこのギルド職員はこの五年間、僕のダンジョン探索者としての何を見てきたのだろうか。
その高校生探索者といいこのギルド職員といい、なんかこうっ色々と言いたいという思いがふつふつと湧いてくる。
しかしギルドの人間と揉めても結局何の得にもならない。
大抵は探索者の方が割を食うのが今の日本なのだ。
結局、色々と言葉を呑み込むしかないのかな……。
お金を受け取った僕は早々に話を切り上げてギルドは後にすることにした。
今日はちょっと飲みたい気分である。
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