第4話 下級探索者の青いカード
そして数分間ほど僕は助けた探索者たちとやり取りをした。
その結果…。
「アンタが俺たちを助けた? 冗談だろう?」
「嘘に決まってるわ」
「信じられないな…」
「確かにな」
「…………」
何故か僕は助けた探索者四人に嘘つき呼ばわりされていた、何でこうなっちゃったかな…。
理由は簡単だ、彼らは探索者になって二年ほどパーティーを組んでるらしく少し前に中級探索者になったそうだ。
そんな自分たち中級探索者のパーティーが全滅しかかったバジリスクを下級探索者の僕が倒したというのが信じられないらしい。
探索者のランクを示すのは探索者になる時に渡されるカードの色だ。
下級探索者は青。
中級探索者は赤。
上級探索者は黒のカードを渡される。
少し前までは自分たちを助けた僕に対してお礼を言っていたのだ凄腕の探索者なんですねとか一緒のパーティーを組みませんかとか色々言われてたのだが…。
それが僕の青色の探索者カードを目にしたら一瞬で手の平返しする様にこんな感じである。
心情を理解できないかといえば多少は理解はできる、まだまだ若すぎて自分の本音というのを隠す気がないようだ。
ちなみに石化する前に助けた探索者の女の子がフォローをしても聞く耳を持たなかった。
バジリスクの魔石があって自分たちのパーティーの人間が助けられたと言っている相手を何故信用できないのか…。
やっぱりなったばかりの中級探索者としてのプライドが邪魔をしているのだろう。
もちろんここはダンジョン内だ、つまらない水掛け論をいつまでもをしてる時間はない。
さっさと話を切り上げよう。
「僕の話を信用できないというのは分かった。たかがバジリスクの魔石一個だ、必要だったらそちらに渡すよ」
「貰えるというのなら貰うさ、まっ何度も言うが下級探索者にバジリスクが倒される訳ねぇんだけどな」
「大方他の中級探索者か上級探索者が倒したの自分が倒したって言ってるだけなんじゃないのか?」
「その通りだ、それで水希を騙してるんだろうな」
「……最低ね」
なんでたかがバジリスクの魔石一個でそんな手の込んだ真似をこちらがすると思えるのか。
きっと彼らの中ではあの女の子の探索者、水希とやらも石像にされた状況で他の探索者が自分たちを助けてくれたと考えているんだろう…。
そのつよつよ探索者は助けた後は颯爽とその場を後にして、そこに卑しい下級探索者の僕が現れてあることないこと言って恩に着せようとしていると思っていると…。
そんなんある?
そう思わなくもないがそうとでも考えないと辻褄が合わないので仕方ない。
つまりは幾ら説明しても多分無駄って事だ、
「そう思うなら思えばいいよ、僕も暇じゃないからね。けどこれだけは言っておく」
「……なんだよ」
「バジリスクの石化攻撃に対する対策も禄にないのにこのエリアに来たのがそもそも間違いだ。それにどうも周囲の警戒を怠っていてバジリスクの接近に気づかなかったようにも見える、油断のしすぎだね」
こちらの指摘に大剣を持っているリーダーらしき男は、事実を言われたからかそれ故に余計にイラついたような顔をしていた。
「そっそんなことアンタに言われる筋合いはないだろ!」
「あるよ。ここはダンジョンだからね、探索者同士は助け合うことが推奨されている。君たちのつまらない凡ミスで君たちがピンチになる、そしてそれを他の探索者が見つけて君らを見なかった事にする、もしその現場を他の探索者たちに見られでもしたらその見捨てた探索者は罪に問われるんだよ。わかるかい?」
馬鹿をした馬鹿を見捨てると罪になる、バカみたいな話だけどそうなるんだよ。
「「「「………………」」」」
「君たちは高校生? なら教えとくけどここは学校じゃないんだ、教師なり先輩なり親御さんみたいに君たちの失敗を尻拭いてくれる相手がいつもすぐ傍にいるなんてないんだよ、そしてはっきり言っておくけど君たちが次に全滅するピンチになったとしても流石に僕も助けるほどお人好しじゃない、と言うか大抵の探索者たちが同じ状況になれば君たちを助けようと思うわけもないからね」
「……何が言いたい」
「自分たちの小さなプライドを守るためにパーティーの仲間たちの命も危険にさらすような事しているから気をつけろと言ってるんだ、バジリスクってねあのヘビ頭の牙にも毒があるだ、だから一度獲物を石化させて動けなくした相手に噛みついてその毒を注入する、そして抵抗出来なくなるまで毒が体に回った段階で石化を解いて、その後獲物を生きたまま丸呑みするんだ。君らもそうなっていた可能性が高かった事を肝に銘じておきなよ」
さすがにバジリスクも石像をそのまま バリバリ食うなんてことをするわけはない、一応あれも生物だから。
僕の話を聞いた中級探索者パーティーの連中の顔が引きつる。
「…少なくとも君たちの浅はかな行動によってそうなる未来が目前まで迫っていた。それはよく覚えておくことだ、それじゃあ失礼させてもらうね」
僕って機嫌が悪くなると話が長くなる、こんなんだから人と話すのって少し苦手なんだよね。
そして僕は彼らから離れダンジョン探索を続きをした。
あの女の子、水希と呼ばれていた彼女だけは僕の方に向かって頭を下げていたよ…。
彼女がパーティーの中で嘘つき呼ばわりされないことを祈るばかりだ。
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