第2話 運が良いのか悪いのか
日本にダンジョンが現れ、そしてダンジョン探索者という職業が生まれ大分馴染んできた、そんな時代の
子供の頃に夢見たゲームや漫画のような光が当たる舞台を夢見てついつい探索者になんて不安定な職業になってしまった僕だ。
そしてやはり現実というのはゲームや漫画と違ってなかなか厳しい。
あとさっあのギルド職員、僕がダンジョンから得た資源を売りに行くと必ず僕の担当するんだけどさ。
もっと美人だったり可愛い女性の職員とかに受付をしてほしい。
四十代のメガネのおっさんとか嫌なんだけど、本音はね…。
まあそんなことを思っても仕方がないか、現実とは常に不条理なものなのだ。
この日本にもいくつものダンジョンがある、僕がその中でメインで活動するダンジョンの一つがよくホブゴブリンたちを狩るダンジョン【石壁の魔宮殿】である。
その内装はまさに古き良きローグライクゲームに出てくるような石造りの遺跡的な内装をしているダンジョンだ。
ダンジョンギミックも豊富でこいつで一旗上げようと企んでいる僕にとってこのダンジョンは当たりなんだ。
……ギルド職員の言ってた事?
知らない知らない、だって危険を犯してモンスターと真正面から戦うとかしたら死んじゃうもの。
もうこうなればダンジョンギミックでもっと凄い大物を倒してギャフンと言わせてやる。
もうね、僕の我慢にも限度があるのよ…。
そんなわけで今日もこのダンジョンに 僕は来ていた。
ホブゴブリンにしても他のダンジョン モンスターにしてもダンジョンで活動する時、その数は一体だったりそれ以上だったりとまちまちだ。
当然、僕は狙うのは単体で行動している奴だけだ。
理由は複数で行動してるモンスターに囲まれてボコられたら僕なんて簡単にあの世行きだから。
というわけで今日もダンジョンをコソコソと移動していたのだが…。
「バッバジリスクだ、バジリスクが出たぞーー!」
「嘘だろぉおっ!?」
「ヤベぇじゃねえか!」
「早く逃げないとまずいよ!」
「ダメっ! 追いつかれる!」
どうやらどこぞの探索者ご一行が、これまた禄でもないモンスターの筆頭格を引き当てたようである。
声の聞こえた方へと移動する、ひらけた空間にて探索者パーティーがモンスターに追われていた。
バジリスク、茶色い鱗に全身を覆われてヘビの頭に人間の体を持つモンスターだ。
身長はだいたい成人男性よりもかなり大きく三メートルちょっと、といったところか。
大きくてとても怖いヤツだ。
バジリスクの厄介なところはヤツが持つ『石化の魔眼』だ。
なんと見られただけで人間は生きたまま石にされる。
無論、石にされてもその後にスキルか石化解除のアイテムで石化を解けばいいのだが…。
もしも石像の状態で破壊されたりしたら基本的にもう駄目だ、この【石壁の魔宮殿】でもバジリスクは特に危険度の高いモンスターとして有名で、基本的に出会わないように細心の注意を払うものだが…。
どうやらそれを怠ったようだな。
「くそっこれでもくらえっ!」
ボウガンを手にした男の探索者がバジリスクを攻撃する。
放たれた矢がバジリスクの鱗に当たり あっさりと弾き返された。
バジリスクの魔眼が光ると次の瞬間、男は石になった。
狼狽えながらも仲間をやられたからだろうか、探索者パーティーは覚悟を決めたようだ。
「畜生、やるしかねぇっ!」
「やるってどうするんだよ!?」
大剣を手にしたリーダーらしき青年が片手剣を手にした男と共にバジリスクの前に立ちはだかる。
だが一度も武器を振るう事もなくあっさりと石化されてしまった、男子~。
残った二人はどちらも若い女性の探索者だ、またバジリスクの魔眼が光ると片方の探索者が足の方から石化し始めた。
石化していく女性の探索者は残っているもう片方の女性探索に助けを求めて悲鳴を上げるがどうすることも出来ずすぐに石像になった。
残るはあと一人、腰は抜けたのか最後の一人は地面にへたり込んでしまっていた。
バジリスクもはや逃げられる心配もないと考えたのか魔眼すら使わずのこのことその探索者の目の前に移動している。
本来の実力で言えば、僕じゃあバジリスクなんてどうしようもない相手なのだが…。
「この辺りだったらあのダンジョン ギミックが使えるな、仕方ない…」
全く、運が良いのか悪いのか……取りあえず助けるとするか。
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