空色の夢 作:希水溶液

2021.11.15(月)

 今日は朝学の時間に数学の演習がありました。問題を解いていると頭がこんがらがってしまうので数学は苦手です。だけど直前まで詰め込んでいたおかげか、ギリギリなんとか合格できました。先生から合格を貰って席に戻る時、ふと目に入った××くん。ほとんど解けていないようでした。声をかけたかったけれど、私にそれをする勇気はありませんでした。胸の奥がきゅっ、となりました。


2021.11.16(火)

 最近、雲さんになりたいと思います。お空にふわふわふわふわ浮かんでとっても気持ちが良さそうです。昼休みに×××ちゃんにこの事を話したら、なれば? と言われました。

 今日はとても疲れました。放課後、机に積まれた職員室に運ばれるはずだった提出物のノート。係の人は忘れて帰ってしまったみたいでした。教室には私一人、胸の中でとろり、と溶ける感覚がしました。一人でノートの山を職員室に運ぶと、先生は呆れたように、もっと早く持ってきなさい、と言いました。ちくりと胸が痛んだけれど、笑顔が剥がれない私は、笑いながらすみません、と言いました。

 夜中になんとなくテンションが上がったので、親に隠れて洗面所で前髪を切りました。自分にしては上手く切れたので良かったです。明日になると後悔するかもしれませんが、別に今はこの気持ちのままでいいです。明日のことは明日の私が考えればいいや。


2021.11.17(水)

 今日は朝、マンションから降りるエレベーターで人と一緒になりました。私は笑顔で、おはようございます、と言ったけれど聞こえていないようにそのまま行ってしまいました。長い間ずっと無言だったのがつらかったです。

 夜中、腕を切ってみました。そんな仰々しいような理由は無いです。ただ思いついたからやってみただけ。感想としては、痛痒いような感覚がしました。血が二の腕から手首くらいまで垂れてきて面白かったです。次は指先まで流せるように挑戦してみたいです。寝ます。


2021.11.18(木)

 最近は特に朝起きるのがつらいです。ずっと眠っていたい。どうにか休めないかと必死に体温計を脇に挟みますが、普通に平熱でまぁそうだよなとなります。朝日を見るのが怖い。もう夜が遅いです。早く眠らなくちゃ。明日が今日になってしまうから。


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 昔、私の名前の由来をお母さんに聞いたことを思い出しました。どうやら私の名前は親族の名前から"へん"と"つくり"を組み合わせて作られたらしいです。親の理想を詰め込んで継ぎ接ぎ作られた私なら、歪で不恰好で、その縫い目から中身が漏れ出しているのにも妙に納得できました。おやすみ


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 今日は初めて学校を休みました。ズル休みです。体温計はいつもの通り平熱でしたが、お母さんにお腹が痛いと嘘をついて休みました。お母さんはしばらくは何か言っていたけれど私の顔を見ると休むのを許してくれました。もう一度眠ります。


 起きました。お母さん達は仕事に行ったみたいで私はこの家に一人きりです。今ならなんでも出来そうと思いました。窓を開けるとひどく新鮮な気分になりました。ふと温かい何かが私の手を優しくとってくれる感覚がして、きっと今なら、雲さん達と一緒に、どこまでもいけそう。

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