第10話
名前:トオル・コガネイ
レベル:3
生命力:100
攻撃力:30
守備力:25
魔力量:30
魔法力:15
魔法守備力:15
魅力:15
運力:20
通常スキル:new火の魔法
レベル1の合計値90だった俺が、レベル3になって合計値250まで急上昇した。
その上で、火の魔法を使えるようになったのはかなり嬉しい。
カタログ召喚も魔法ではあるが、カタログが出て来るだけなので、魔法を使っている感覚がない。
だが、火の魔法は何もないところから、魔法として火が生まれる。
それこそ異世界ファンタジー魔法だって俺は思う。
「凄いね。王都にいる騎士たちと数値が変わらないほどだ!」
「そうなのか?」
「ああ、異世界の勇者たちはレベル1で合計値が1000だったけど、あれは例外だと思ってくれればいい」
ブラフが例外と呼んだ四人の顔が浮かんでくる。
彼らが今後はどんなことをするのか知らないが、過ぎた力は破滅を呼ぶとも言う。
何もなければいいが……。
「普通の平民で100を超えるぐらい。騎士たち訓練をしている者で200〜300ぐらいが平均値なんだよ。私は自分の鑑定はできないからわからないが、トオルの数値は王都の騎士と変わらない」
やはり勇者召喚に応じた異世界人は多少のチート能力を持っていると言うことだろう。カタログ召喚も使い続けていれば進化するかもしれない。
「なら、もっとレベルを上げれば、戦うのに楽になるってことだな」
「ああ、多分だけど、勇者たち以外なら、トオルもかなりの強さを持てると思う」
「よし! やる気が湧いてきたぞ。これで俺にも役目ができたな」
「役目?」
「ああ、ブラフは領主だろ? だが、俺の役目は宙ぶらりんだった。大工として他の奴らを導いくことはできるが、やっぱり俺がここにいる理由みたいな物が欲しいって思ってたんだ」
レベルを上げれば強くなれる。
やっぱり剣と魔法の異世界ファンタジーの世界に来たんだ。
そして、俺は火の魔法が使える。
まだまだ戦うのに慣れてないし、魔力も少ない。
だけど、俺という存在に意味を持てた。
「そんなことを考えていたのか? トオルはいるだけで十分に役に立っているぞ。料理、掃除、洗濯、カタログ召喚、それにアイディアを出してくれているじゃないか」
「家事全般は一人暮らしをしていたら誰でもできるようになるさ。カタログ召喚も俺の能力だが、俺自身が凄いわけじゃない。アイディアは異世界人として、元の世界の記憶や知識だろ。俺自身が考えついたわけじゃない」
ブラフが褒めてくれたことは何一つ、俺にとっては誇れることじゃない。
俺自身が努力して成し遂げたと誇れるのは、大工としてやってきた技術だけだ。
だが、今のところは屋敷の修繕ぐらいしか、役に立ててない。
それは俺が思っていることとは違うんだ。
「どうして、トオルはそんなに人の役に立ちたいと思うんだ?」
ブラフの問いかけに、俺はゆっくりと自分の過去を語り出した。
俺は中学三年の時に両親を亡くした。
交通事故で、トラックに突っ込まれて死んでしまった。
叔父である親方が、育ての親になってくれて、中学を卒業した。
親方のことは、あまりよく知らなかったが、無口でとても優しい人だった。
俺が大工としての仕事を教えて欲しいと伝えると、最初は反対して高校に行けと言われた。だけど、俺は早く誰かの役に立ちたくて、親方に仕事を教えて欲しいと頼みこんだ。
そんな時に叔父が俺に言った言葉がある。
「お前は強いな。なら、誰かのために生きてみろ。人は自分のために生きていると限界が来てしまうことがある。誰かのために頑張りたいと思えば不思議と力が湧いてくるんだ」
叔父の言葉は、最初はわからなかった。
わからないなりに一人前になりたい。
一人でも生きていく力を身につけたい。
そう言う気持ちだけが強く前に出た。
叔父は両親を失った絶望感と共に家族がいなくなった孤独感を持つ、俺に生きる希望を与えようとしてくれいたんだと今ならわかる。
異世界に来ても、俺はブラフのために生きてみようと思えている。
大工の仕事だって本当は大変だった。元々、頭はよくなかったから、大工仕事を覚えるのに必死だった。
大工の仕事はセンスが必要で、技術に思考が必要で、計算も多い。頭を使ってやることが多かった。本当に最初は苦労した。
だけど、一つ一つの仕事ができるようになっていくと、親方に認めてもらえて、周りの職人さんたちからも声をかけてもらえるようになった。
「トオル坊、こっちを頼めるか?」
「トオル、ほらコーヒーやろう」
周りの職人さんたちは気の良い人ばかりで、俺は恵まれていた。
だけど、いつも俺の心には一人前になりたいという思いが強くあった。
バカな俺がネット小説を読み出したのも、何か趣味を持てと叔父の言葉に従ったのもあった。
俺の心の中でも一人前になるために必要な知識を得たいという気持ちがあった。
小説を読み始めた頃は、読んでいても全然理解できなかった。
異世界に転生? なんだよそれって思ったけど。
別の世界に移動した主人公が現代の知識を使って活躍する。
その現代の知識を俺は知らない。
石鹸の作り方、戦闘時の戦術や戦略、料理や薬学の知識など様々で。正直、頭を使ってやることは向いてないと思った。
だけど、キャンプやサバイバルゲームなんかの体を動かすことはやってみると楽しかった。サバイバルゲームなどは、他の人たち交流を持つ機会も増えてお菓子作りや料理をする機会があった。
意外に自分でもやり始めると楽しかった。
向き不向きがあって、出来ることと出来ないことがある。
それを俺は小説を読んで、チャレンジすることで学ぶことができた。
「……そうだったんだね」
俺の話をブラフは最後まで茶々を入れることなく聞いてくれた。
たいした人生ではない。
平凡だけど、俺という人間を作ってきた人生だ。
「トオルはやっぱり凄いだけじゃなく、努力家で、偉い人なんだね」
「偉くはねぇよ。努力はしたと思うけど」
「はは、偉いよ。両親が死んで絶望に打ちひしがれるんじゃなく、自分で一人前になろうとした。私は両親に守られ、領主という地位も与えてもらった。それが過酷なことでも恵まれていると思えたよ」
俺からすれば、ブラフだって恵まれていると思えない。
第五王子として苦悩した日々、与えられた領地の厳しさ。
「俺の方こそお前を認めているから、自分の話をしたんだ」
「認めている?」
「ああ、お前も偉いよ。だけど、俺も話したんだお前のことも聞かせろよ」
「私のことなんて」
「良いから」
「はぁ〜わかったよ」
俺たちは自分の過去を語り合った。
それが互いを認め合うことだと思ったから。
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