第8話

 ブラフの鑑定魔法は、王城でしてもらった鑑定とは異なることがわかった。

 俺の鑑定をしてもらった結果を見て、前回との違いが明確になった。


 他の者たちの面接を終えて、二人で夕食の時に書き出してみた。



 名前:トオル・コガネイ

 年齢:23歳

 性別:男性

 称号:異世界召喚に巻き込まれた者

 職業:大工

 技術:大工仕事全般

 レベル:1

 体力:50

 魔力:10

 魅力:10

 運力:20

 固有スキル:カタログ召喚



 王都で鑑定してもらった結果と、ブラフがしてくれた鑑定魔法を比べて見る。



 名前:トオル・コガネイ

 年齢:23歳

 性別:男性

 称号:異世界召喚に巻き込まれた者

 職業:大工

 レベル:1

 生命力:30

 攻撃力:10

 守備力:10

 魔力量:5

 魔法力:2

 魔法守備力:3

 魅力:10

 運力:20

 通常スキル:ハンマー術(熟練度中級)、ノコギリ術(熟練度中級)、射的術(熟練度上級)木材加工術(熟練度中級)、鉄加工術(熟練度中級)、乗り物操縦術(熟練度中級)、

 固有スキル:カタログ召喚(熟練度初級)《目録。展示物。商品。営業内容などについての目録や案内書ならば全て》、自動翻訳(熟練度MAX)

 知識スキル:異世界知識、異世界サバイバル術、異世界喧嘩術

 加護:???神からの加護。(火の素質)



 明らかにブラフの鑑定の方が、詳しく鑑定が行えている。


 大工技術としか書かれていなかった項目が、詳しく分類されていて、宮大工になりたいと思って磨いていた技術が反映されている。


 カナヅチ、ノコギリ、墨つぼ、カンナ、差金、ちょうな、などは特によく使っていた。


 だが、俺は普通の大工として鉄も使っていたから鉄加工がついたことも推測できる。たくさんの乗り物の免許をとっていたからスキルとして詳しく表記されたわけだ。


 体力とだけ表記された内容が、ブラフの鑑定では、生命力、攻撃力、守備力と言った個別表記がなされている。


 知識スキルや加護などは、王都の鑑定では出ていなかった。


 これがブラフの能力だと思えば、とんでもないチートだ。


「ブラフ」

「どうしたんだ?」


 夕食の後は、リビングでお茶を飲むことにした。


「ブラフは天才だな」

「急に何を言ってるんだ?」


 呆れた顔をするブラフは、若干頬を染めて見える。

 ブラフが入れてくれた紅茶を持って、椅子へと腰を下ろした。

 

 俺は本日の鑑定結果を教えてもらったことに感動した。


 それも鑑定魔法は異世界チート能力の代名詞に挙げられるような有名チートスキルだ。それを使えるブラフは、レアキャラだと推測できる。


「具現化魔法にしても、鑑定魔法にしても、凄い魔法だぞ?!」

「そういうことか……。だけどね、私はずっと不遇魔法使いとして言われていたんだよ」

「うん? そうなのか? 俺からすれば凄い奴って感じしかいないけどな」

「本当にすごいのは、トオルの方だよ」

「俺が凄い?」


 俺はこの世界にきて、まだ何もしていない。

 カタログ召喚も正直、使い道を模索しているところだ。


「トオルのカタログ召喚があったから、私の具現化魔法に意味ができた。鑑定魔法も一緒だよ。トオルが村人を従者にしようと言わなければ、私は彼らに対して鑑定魔法を使おうとは思わなかった」


 ブラフは温かい紅茶に口をつけてホッと息を吐く。


「トオルが、私の力を引き出して、意味をくれたんだ」

「うーん、よくわからないが、俺たちは良いコンビってことだな」

「ああ、トオルの発想や技術は、私には無い物ばかりだ。私が城で学んでいたことは、机上の空論でしかなかった。実際に見た草原は広くて、領地は思った以上に荒れていて、世界を知らなかったのだと思い知らされる」


 ブラフは、真面目なやつだ。そして、凄く謙虚なやつだ。


 それはどこか自分の故郷に住んでいる人種に似ているような気がして、親近感が湧いてくる。

 

「なぁ、ブラフ。お前は魔物を殺したことはあるか?」

「急だね。どうしたんだい?」


 だからこそ、俺は剣と魔法の異世界ファンタジーの世界に来て、レベル上げをしないということに我慢ができない。


「良いから、どうなんだ?」

「無いかな。訓練で人とは戦ったことがあるから、剣術などは熟練度が高いが、実際に魔物を殺したことはない」


 やっぱりだ。


 ブラフはどこか自信がなさそうな態度をいつもしている。

 もしかしたらレベルを上げて、自信をつければ、魔力も向上してもっともっとブラフは凄いやつになるんじゃないか? 


「なぁ、一緒にレベル上げをしてみないか?」

「レベル上げ?」

「ああ、剣と魔法の異世界ファンタジーに来て、鑑定能力によって俺たちのレベルがわかっているんだ。それはレベルを上げられるってことだろ? やらない手はないって話だ」

「ちょっとよくわからないんだけど」

「そこからか?」


 この世界の人間は、異世界人を召喚したことがあると聞いていたから、知っていると思っていた。チート能力なども、俺が発した際には言語として変換されていた。

 

 だけど、物語なんかは伝わっていないのかもしれない。


「なら、今日は村人雇用祝いだ。俺が剣と魔法の異世界ファンタジーの面白さを語ってやろう」

「ふふ、トオルはなんでも楽しそうだね」

「当たり前だろ? せっかく異世界に来たなら楽しまなくちゃ損だろ?」


 俺は自分の趣味全開でネット小説や、マンガ、アニメで得た知識を披露する。

 多少テレビで見た知識も交えながら、話を盛り上げる。


 それを聞いたブラフは可笑しそうに笑ってくれた。


 最初に会った時のブラフは、作り笑いをするような奴だったが、馬車で旅をして領地に来てからは楽しそうに笑うことが増えた。


「よし! まずは王道異世界ファンタジーからだ。異世界の王様が勇者を召喚するんだぞ」


 俺は自分たちの境遇にもある話からわかりやすく異世界ファンタジーの話を語り始めた。


 夜にブラフと過ごす日々の中で、続いていく共通の話題になっていった。

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