第24話 僕の過去2

「では【凪桜楓なぎざくらかえで】VS【藤沢つかさ】の模擬戦を始める。審判は俺、夜露零よつゆれいが務める。勝敗の判定はどちらかの腕輪が壊れるもしくはどちらかが戦闘不能となった場合とする。両者準備は良いか。」



「はいっ!」

 元気な声で返事をする少女こと凪桜楓なぎざくらかえで

「は、はい」

 戸惑いながら返事をする僕

「では、はじめっ!!」


 その掛け声とともに彼女は消えて、そして眼の前に現れ、日本刀を振りかざす。

 というわけでよくわからん中始まった模擬戦。まあ、模擬戦といえど殺し合いをするわけだが。どういうことかというと...。

 模擬戦は、学校の組んだ特殊な術式が刻まれた腕輪をはめることで自分が死んだとき、腕輪が変わりに壊れる事により、実際には死なないらしい、が、死ぬような怪我でないと肩代わりしてくれないようなので切られれば傷がつき、痛みも感じる。

 というわけで、【空間把握】で攻撃を察知していた僕はその攻撃を避けた。


「!?どうやって避けてるのよ。あなた目が見えないんじゃないの?」


 正直に話そうとしたが、勝負しているときに敵に塩を送るような真似は良くないと思い、嘘をついた。


「そうだよ。目は見えないけど、風の感じ?とか、音とかを頼りに避けた。」


「だとしてもなんでこの速さについていけるの?私のスキルになんのスキルもなしに対応できるの?」


「スキル?なんだそれ」

 ...もしかして【空間把握】がそうだったり、したり、しなかったり?


「もう!勝負が終わったら説明するわ。」


 そういった彼女はまた消えたが、【空間把握】が後ろからくると言ったので避けた。

 が、

「なっ!」

 避けた瞬間別の方から斬撃。


「かかったわね!くらいなさい!【爆裂斬】!」


 まずい回避できない!


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【凪桜楓side】


 彼は慢心していた。後ろからの斬撃はフェイント。それをお取りに【瞬足】のスキルで彼の前に移動。そして斬撃。手応えがあった。何より着弾時爆発した。【爆裂斬】が決まった証拠だ。

 が、土煙が立っているためか、まだ先生からの試合終了の合図は聞こえない。


 はぁやっぱり彼がSクラスにいるべき人間じゃないわ。このフェイントすら見きれず、手加減した私に敗北する。実力差が歴然としている。

 これで先生も理解してくれただろう。Sクラスの人数はたったの10人。学年200人の内最強の10人が集められているこのSクラス。

 私の順位は5位。

 これでもこの学年のTop.5なのだ。

 きっと彼も自ら辞退してくれるだろ...は?

「んーいたい。いたい。剣でふっとばされるなんてフィクションかよ!。」


 なぜ彼がいる?いやそれよりもなぜなのだ。

 いや正確には、なぜ腕輪がまだ光っている?彼は今の一撃で死んでないということか?そのうえでだ。腕輪の効果が発動しない状態で無傷。

 それは実質攻撃が効かなかった、もしくは当たらなかったということを示している。

 私は後者であってほしいが、多分前者だろう。理由は簡単だ。手応えは確かにあったのだ。しっかりと彼を捉えたはずだ。

 ...それに、私の勘が。何度もアヤカシと戦ったことのある私の勘が。

 彼を危険だと言っている。

 次は本気で行く。彼はなにかを隠してる。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「んーいたい。いたい。剣でふっとばされるなんてフィクションかよ!。」


 ...思わず突っ込んでしまった。

 剣が自分に当たった時。僕は本能的に当たっても大丈夫だと察した。今までは、ナイフや包丁を使うたび体が気をつけろと警報を鳴らしていた。が、今はどうだ。この日本刀を目の前にして一切の恐怖がわかない。

 僕は察した日本刀では僕に傷をつけることは叶わない。そう思った途端僕は避けるのをやめた。まあその結果があれだ。一切効かないとはいえ、身体能力はただの一般人。衝撃だけでこのザマだ。


「できるだけ避けたほうが良さそうだな。」


 そう思った僕は次の攻撃が来るのを見極めて...。


「っ!...速い」


 想定以上に速い!本当にギリッギリだ。...彼女、本気を出していなかった、いや出す気などなかったのか。きっと、僕のようなつい最近まで一般人だった人間に本気を出す気などなかったのだろう。


「また避けた!あなた何者なの?私の術式に遅れを取らない速さ。本当に一ヶ月前まで一般人だったの?私はSクラスの人間なの。この学年のTop.5の人間!なのに、その刀を難なく避けてるあなたは何?」


「僕はただの一般人だよ。」


 う〜んだけど彼女の指摘は的確だ。なんせただの戦闘ど素人の僕がなぜ戦闘慣れしている刀を見切って、そして避けられているか。身体能力は一般人。そう思っていたのに、ほとんど視認できない彼女の刀の軌道が見える...。


 なぜか。 

 ...多少心当たりがある。刀を喰らう直前、僕はを感じた。

 なんだろう。言葉では表せない。体が軽くなって...。力が湧いてきて...。

 うん。わからない。わからないが、そこにある。そんな気がした。

 もしかしたら...。そのがあれば彼女に勝てるかもしれない。


 つかめ。その感覚を。刻め。心に。思い出せ。あの感覚。心の底から燃えるような。体が軽くなるような。温かい。あの感覚――


 ――あ、いま温かく、、、すると眼の前に青白い神秘的な龍の姿。

『ああ、優しい人の子よ。我が清きを分け与えよう。これより我【青竜】はそなたの式神ぞ。この力使いこなしてみよ。』



 はっ!気がつけば眼の前にはまたこちらに向かってくる奏の姿。

 いまのは...。あ、体から力が湧いてきた?。わかったかもしれない。この力。これが。体を流れる膨大な量のエネルギー!!!


 あれ?奏の動きがゆっくりに見える。...たぶんこれも神力の力なのだろう。

 これくらいの速度なら...。僕は走って彼女との距離を走って縮める。そして彼女の振るう刀を見る。綺麗な刀身。剣先が向かうは先程僕がいた場所。

 僕はその剣を左に流す。そして彼女の足を払う。どうだ!


「えっ。」

 そんな声を出した彼女は体制を崩して転んだ――どころか吹っ飛んだ。


 え?


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【凪桜楓side】

「ゴホッゴホッ...ガハッ。」

 咳き込む口を抑えていた手に血がつく。...吐血。

 今何が起きた?

 私は目の前の彼に向かって今までの最高速度で斬り掛かった。

 が、気がつくと視界から彼は消え、私は吹っ飛んだ。

 学校の壁にぶつかってなかったらもっと吹っ飛んでいただろう。


 彼は何者なのだろう...。彼がただの一般人であることに私は納得できていない。

 あの速度の一撃を避け、その上私が視認できない速さで攻撃にまで転じるなんて...。

 彼はこれが初戦闘。戦闘の中で成長している。

 段々増していく速度。一切当たらない刀。圧倒的な攻撃力。

 圧倒的戦闘のセンス。才能。私には無かったもの。私が欲しかったもの。


 今の私は立ち上がるので精一杯だ。多分あと一撃でも喰らったら腕輪が壊れる。

 なら、一撃で鎮める。相手の攻撃より早く。不意打ちで。

 卑怯だなんて言わせない。私は...Top.5として、負けられない。

 それに...努力が才能を超えることを証明しなくちゃいけないんだ!!



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 えーと大丈夫かな?

 いや、一応手加減下から死んではいないはずなんだけど...。

 土煙で見えないな...。【空間把握】で彼女の無事を...。


 あれ?いない?

 いや...これは...。後ろっ!


「...あっぶねぇ。」

 首当たる寸前で彼女の刀を手で受けて止める。


「なっなんで!なんでわかるのよ!!」

 そう戸惑う彼女の後ろに移動し、彼女の後頭部に軽く打撃を入れ、気絶させた。

 そして先生を見る。


「...。【桜凪奏】戦闘不能。よって勝者【藤沢つかさ】!!」


 その言葉を聞き、Sクラスの内の8人は騒然とする。


「見えなかった。[俊足の桜凪]と歌われる彼女より速いスピードで動き、余裕を持って気絶させるとは、恐ろしい方です。」


「すげぇえ!!すげえ!!」


「見えなかった...。俺もまだまだなのかもな。」


「きっと彼は天才ですわ。戦闘の、ね?」


「あたしも負けてらんないわ!!よっし気合入ってきたぁ!」


「はぁ。だるいなぁ。強いやつとか。なんだとか。めんどくさいなぁ。」


「…彼、強い。ワタシ勝てない。」


「あれが転入生。言うなれば[神速の新星]ってとこかな。」



 そんな中、他の8人の声をかき消すように一人の少女が僕に大声で話しかけてくる。

「ねぇ君。私とも戦わない?」


「え、嫌だけど。疲れたし。」

 と僕は返す。


「そ、そんな事言わないで、ね?」

 だが、彼女も負けじと押して来る。


 そんなこんなで困っていると、

「はいはい。みんなそれぞれ言いたいことがあると思うだろうけど彼も初戦闘で疲れているだろうし少し休憩させて上げろ〜。」

 と零が言い、場を沈めた。そしてこっちを向いてウインク。

 どうやら助けてくれたみたいだ。


 彼のお陰で周りの9人も落ち着いたようだった。


 そして先生はこう言った。

「はい。じゃあみんな教室に戻ろうか。」

 と。















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