第4話

俺たちは式を挙げ、夫婦となった。


ある日、妻は言った。


「わたしもね、幸せのポケット、持っているの」


「そうなのか。じゃあ、叩いてみていいかな」


「いいけど……優しくね」


俺は妻の着ているエプロンのポケットを軽く叩いてみた。


しかし、手応えはなかった。


「ポケットの中、空っぽじゃないか」


「ふふふふ……」


妻は幸せそうに微笑んでいる。

俺には意味が分からなかった。


「幸せは二倍になったのよ」


「どういうこと?」


「……あのね……私、赤ちゃんができたの……」


そうか、そういうことだったのか。


「確かに、幸せは二倍になったな」


俺と妻は見つめ合い、そして、笑い合った。


「ひょっとしたら、双子だったりして」


妻のエプロンのポケットを優しく撫でてみる。


ポケットの中から幸せが伝わってきた。



< 了 >

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幸せのポケット 神楽堂 @haiho_

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