最終回 あたし達まだまだ青春まっさかりです。

7月。

新緑が眩しい季節になった。

パートで働いてた弁当屋はオーナーが高齢の為、店を閉める事になった。

奈那理那の大学生活も、あっという間に過ぎ、2人とも無事に就職が決まって、子供にお金もかからなくなったので、あたしは今、専業主婦で、のんびり過ごしてる。

掃除機をかけ終わり、テレビを付けると、めぐみ君が番宣で出ていた。

新しいドラマに主演で出るみたい。

頑張ってね!


4年前――――――


夜の公園。

愛君はキャップを深く被り、マスクで顔を隠す。


「ごめんね。やっぱり、これがあたしの答えです。」


あたしは頭を下げた。


愛君は黙って俯き、そして、ポケットから指輪を出した。


「俺の方こそ、ごめん。ワガママばっかり言って、真美さんに甘えて・・・。

わかってはいたんだよ。真美さんは、旦那さんと、娘さんを愛してる。俺は、とんでもない事をしてるって。

頭では、わかってたんだけど、どうしても、辛い時とか、疲れた時、嬉しい時に、真美さんが浮かんじゃって、抑える事ができなかった・・・」


愛君は、あたしの左手をとり、そっと薬指に指輪をはめる。


「いっぱい迷惑かけちゃって、ごめんなさい。

だけど・・・ありがとう。俺は幸せだった。」


あたしは涙をこらえた。

愛君の目にも、うっすらと涙が浮かんでるような気がする。


「弁当屋の紹介の企画も断っておくね。あそこは、俺だけの思い出の場所にしたいし、それに・・・・もう会わない方がいい。」


あたしは頷いた。


「ありがとう。お元気で。」

「ありがとう。さようなら。」


あたし達は別れた。


あれから全く会う事は無くなったけど、テレビでこうして彼の活躍を見ては、あたしは彼に感謝してる。

こんな50歳近い普通のおばさんを、本気で好きになってくれて、あたしも何年かぶりにトキメキを感じて、夢を見させてくれた。


「あ、そろそろ時間ね。」


あたしはワンピースに着替え出掛ける。


りかちゃんがイタリアに行って4年がすぎた。

彼女はイタリアでハンドメイド作家として活躍してて今日は凱旋展覧会の日だ。


『稲田りか 加藤誠 凱旋二人展』


会場の入り口には、大きな看板が掲げられてる。


「すごいな~。りかちゃん。」

「すごいけどね、まさか誠と一緒とは・・・」


複雑な顔の雅ちゃんを、あたしはなだめる。


りかちゃんはイタリアで、雅ちゃんの元不倫相手の加藤さんと知り合い、共同で作品展を開催してる、パートナーみたい。

それ以上の関係かどうかは、よくわかんないけど、彼女はとても充実した生活を送ってるみたい。

もちろん。りかちゃんは、雅ちゃんと加藤さんの関係を知らない。


「雅ちゃん、真美ちゃん久しぶり〜着てくれて、ありがとう。」

「りかちゃん、すごい人になっちゃったね~。」

「別に、すごい人じゃないよ。毎日、好きに生きてるだけ。」

りかちゃんは照れながら言う。

「塔子は今日、どうしても仕事で来れなくて、おめでとうって伝えてって。」


雅ちゃんは伝えた。


塔子は先生を辞めて、不登校児や、その家族を支える会社を立ち上げ、全国の保護者の相談にのったりしてる。


入り口の看板を1人の赤ちゃんを抱っこした

背の高い男性が見ていた。

奏斗だった。


「奏斗さ~ん。なに見てるの?」

「ごめん、今行くよ。」


立ち止まる奏斗に彩華いろはが話しかける。

奏斗は、相変わらずの優しい笑顔で、りかの姿を遠目に確認し、声をかける事はなく、歩いて行った。


「奏斗さん、展覧会、興味あるの?」

「ううん、別に。」


奏斗は優しく赤ちゃんをあやした。


夜になり、『バパや』で、4人、4年ぶりに集まった。


雅ちゃんと塔子が、嬉しそうにスマホの写真を見せる。

まだ生まれて数ヶ月のカワイイあかちゃんの写真。


「ま―さか、あたしと塔子が親戚になるなんてね~。」

「ほんとだよね〜世間は狭いよね〜。」


そう。なんと、紫恩しおん君と、奈緒ちゃんがデキ婚して、雅ちゃんと塔子は親戚になった。


「ビックリだけど、でも良かった。みんな元気で、幸せそうで。」


りかちゃんがビールを飲む。


「雅ちゃんの浮気願望も落ち着いたみたいだし。」

「うん。もう浮気はコリゴリ〜。」


雅ちゃんは、りかちゃんを見るけど、彼女は全く気がついてなかった。


「でもさ、うちら、イロイロあったけど、まだまだ楽しみたいよね。やりたい事はたくさんある。」


雅ちゃんは言った。


「うん。あたしは少しでも不登校の人の力になりたい。もう誰かが、命を落とすとかしてほしくないし。」


塔子も言う。


「あたしも、たくさん作って、展覧会をいろんなとこでやりたいな〜。イタリア、日本、他の国でも。

あと・・・結婚してもいいかな。」

「えええ――――――!!!」


みんなが驚く。


「なによ!?」


「いやいや。」


年月は人を変えるのかな。


「真美ちゃんは?なんか、やりたい事とか。」

「あたし?う〜ん。

このままでいいかな。毎日、幸せだし。」


そう。幸せな毎日。

これを続ける事が、あたしのやりたい事なんだ。


「あたし達、アラヒィフだけど、まだまだ青春まっさりよね!」


END



読んで頂いた皆様へ

数ある小説の中から、この作品を選んでいただき、ありがとうございます。

この作品は、あたしのカクヨムデビュー作になります。小説デビューしてから、まだ日が浅い為、悪文で、読みにくいところも多々あったかと思います。

これから、少しでも面白い作品が書けるように勉強して参りますので、今後もよろしくお願いいたします


本間和国

WakoHonma

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アラヒィフおばさんだってまだまだイケルんです! 本間和国 @kunuakitubu

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