4ババ京都旅行 真美

「お母さん明日から京都だよね。」

「いいな~八ツ橋買って来てね〜。」

「うん。買ってくるからね。」


明日から泊まりで行く京都旅行の準備を終え、リビングでコーヒーを飲みながら、奈那理那と会話を交わす。


「お、明日か京都。いいな〜。俺も行きたいけど、なかなか機会が無いなぁ。」


お風呂上がりの旦那が冷蔵庫からビールを出してソファーに座る。

いつもみたいにマッタリした夜。

結婚してから友達と旅行なんて全く行けなかったから、すっごい楽しみ。


あたしは準備を終えると、寝室に行き、めぐみ君にラインする。


―――お疲れ様。あたし明日から京都に行ってくるね。

―――京都いいネ!了解。楽しんできてね!

―――愛君は今日も遅くまで仕事?

―――そうだな。12時くらいには帰れると思うけどね。

―――頑張ってね!

―――ありがとう!


集合場所の駅に着くと、雅ちゃん、塔子、りかちゃんがもうすでに待っていた。


「おはよう。」

「おはよう。」


雅ちゃんがあたしに気づいて挨拶を交わす。


「奈那ちゃん理那ちゃん、大学合格おめでとう〜。」

「ありがとう〜。」

塔子も、奈緒ちゃんが家にもどったみたいで良かった。

だけど、紫恩しおん君と奈緒ちゃんが付き合ってたって聞いた時は本当にビックリしたよ。


新幹線が着いて乗り込む。


「ねぇ、まさか紫恩くんと奈緒ちゃんが付き合ってたなんてビックリだよね。」


あたしは切り出した。


「うん。あたしもビックリした。2人とも、どんな感じ?てかさ、しばらく雅ちゃんの家にいたんでしょ?奈緒ちゃん。大丈夫なの?もうヤッたのかな。」

「ヤッてません!!」


興奮気味のりかちゃんに、雅ちゃんと塔子、2人が声を揃える。

思わず4人で爆笑した。

ほんとに楽しい。この3人。大好きで、ずっと一緒にいたい大親友だ。


新幹線は京都に着き、あたし達はバスに乗り換え、金閣寺、清水寺、三十三間堂と、京都の名所を満喫した。


旅館に着いて、豪華な食事を楽しんで、温泉でリラックス・・・

はぁ〜・・・この上ない贅沢に、ホントに感謝だわ。

あたしは旦那と奈那理那に近況報告のラインと、旅行に来させてくれて、ありがとうのラインを送った。



ラインの返信がくる。

―――そっちも天気が良さそうだね。楽しんでおいで。


優しい旦那に感謝感謝。


「カンパーイ!!」


みんなでビールで乾杯したら宴会スタートだ。

雅ちゃんの不倫話がすっごい気になる。

でも、きちんと別れられたみたいで良かった良かった。

やっぱり不倫は良くない!

旦那や家族を裏切るなんて・・・

あたしは・・・

あたしは一体、何をしてるの・・・。

こんな、あたしを心の底から愛して信用してくれてる旦那がいるのに、あたしは愛君ほかのひとの事を考えちゃう・・・

愛君の事は考えないようにしてるのに、ふとした時に思い出してしまう。

優しい笑顔、素直な可愛らしい話し方、あたしを包み込むような背の高さ、大きな手・・・そして・・・激しい舌使い・・・。


「ん〜。どうしよっかな。あたしはオンナでいたいし。」


塔子に、強く言われても雅ちゃん言い返す。

強いなぁ。雅ちゃんは。

あたしは、そんなふうに割り切れない。

だけど、雅ちゃんが彼と別れた理由を聞くと、なんだか切なくなってきた。

仕事か恋か・・・

あたしと愛君も、必ず別れないといけない。

手遅れになる前に。

彼は今、やっと夢を叶えたのに、人妻と不倫してるなんてマスコミに知られたら全ての努力が無駄になっちゃう・・・


「え〜?切ないね・・・」


思わず呟いてしまった。


「切ないかぁ?」


塔子が不倫妻2人に呆れる(あたしの不倫は誰も知らないけど。まさか目の前の親友が2人も不倫してるとは、思いもしないだろうけど。)塔子が呆れるのもわかるんだけど、理屈だけじゃなんともならない事は、あるんだよ。

わかってるんだけど、胸が苦しくなっちゃう事。

仕事を選んで欲しい。

頭ではわかってるんだけど、女って・・・


「だってさ、仕事か恋人かって事で、彼は仕事を選んだんでしょ?切ないじゃん。ねぇ、雅ちゃん。」


思わず雅ちゃんの味方をしてしまう。


雅ちゃんがテレビをつけるとNI7のCMが流れていた。

ドキンッ

このタイミングで出てくる?普通。

あたしは指輪の無い左手の薬指を触る。

あれから・・・

まだ答えを言えずにいた。

あたしは旦那を愛してる。

誰よりも、心の底から真剣に。

娘も同じ。

彼女達に軽蔑されるような母親にはなりたくない。

答えは決まってるのに、なのに・・・


「彼女いるのかね〜。いたとしても大変だよね。こんな子とコッソリ付き合うの。」


ドキンッ

ヤバッ


「うちらくらいの人だったら笑えるね~」


ギクッ

あっ!

ビールを持つ手がすべっちゃった!


「やだぁ〜」


あたしは急いでタオルを取りに行く。

脱衣場に行くと肩からぶら下げてたスマホが鳴る。

愛君からだ。


「もしもし、真美さん?今・・・旅行中だよね。ごめん。急に声が聞きたくなって・・・」


少し元気の無い声。愛君らしくない。


「どうしたの?なんか、元気ないけど。」


周りにバレないように声を潜める。


「少し疲れたかな・・・仕事忙しくて・・・

明日、帰ってきたら会えない・・・?」


キュン・・・


胸が苦しくなる。

断ろう。

でも指輪返してもらわないと。

はっかきり答えを出して指輪を返してもらおう。


「あと、弁当屋の件、伝えてくれた?」


そっちか。

急に真面目な話だな。


「うん。いいって。また日取りは直接話し合って欲しいな。」

「わかった。ありがとう・・・助かったよ・・・じゃあ、明日・・・会える?」

「・・・うん。わかった。」


会って断ろう。

あたしは電話を切った。


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