4ババ京都旅行 雅子

「化粧水入れたし、乳液入れたし、美容液入れた、よし!おっけ!」


パタンとスーツケースを閉じる。


「あれ?どっか行くの?」


仕事が終わって帰ってきた旦那がキョトンとした顔で聞いてきた。


もう!何回も言ったじゃん!


「だからぁ、明日から1泊でいつもの4人で京都に行くって、何回も言ったじゃん!」

「あれ?そうだっけ。俺、聞いてたっけ?」


何回も言ったわ。ボケ老人が!

もう、旦那ってなんでこうなの?!何回言っても、おんなじ事聞いてくる。

疲れた。

明日っから束の間のリラックスタイムを楽しんでこよう。


真美ちゃんとこの双子が無事、大学に入学して、塔子のとこの奈緒ちゃんも高校辞めて、通信制に通いだしてからは、毎日楽しくやってるみたい。

りかも、奏斗君と別れて半年たった。

あたしも誠と別れて1年がたって、なんとか立ち直れた。

誠とは・・・遊びのつもりで付き合いだしたんだけど・・・どんどん彼の魅力に惹かれてって・・・ほんとに好きだった。

愛してたのかなぁ・・・あたし・・・

なんだかんだ言っても、「愛してる」なんて感情は、旦那と紫恩しおんにしか向けた事ないから、彼の事を愛してたのかどうかは、わからない。

でも・・・別れてからの、このポッカリ心に空いた大きな穴を思うと、愛してたのかもしれない・・・

まあ、なんだかんだあった4人で、ひとまず落ち着いたお祝いに、旅行に行こうってなった。


「おはよう。」

「おはよう。」

「おはよ〜。昨日楽しみで、なかなか寝れなかった〜」

「あたしも〜楽しみだね。天気もいいし。」

「奈那ちゃん理那ちゃん大学合格おめでとう〜。」

「ありがとう〜。」

「奈緒ちゃんも通信に変わってから元気?」

「元気、元気。通信って言ってもさ、週に何回は学校に行くんだけど、休まず行ってるの。おまえ、行けるんなら高校行けよって思う。」

「まあまあ、行けるようになったなら良かったじゃん。」


オバサンが4人集まると、話題が次から次へと出てきて、会話が途切れる事なんて、まず無い。

新幹線に乗り込んで、数時間で京都駅に到着。


「えっと〜バス乗り場はどっちだ?」

「中央方面に行けば良いみたいだよ〜。」


真美ちゃんがスマホで検索しながら、みんなでバス乗り場に向かう。

無事にバスにも乗り込み、いざ!京都観光に出発!


金閣寺、清水寺、三十三間堂など、あたし達は有名観光地を楽しんだ。


夕方になり、温泉旅館にチェックイン。

夕食は5時から頼んであるから、ご飯食べてから、みんなでお風呂に行く事にした。


残してきた家族には申し訳ないくらい豪華な食事と、広くて優しい湯加減の天然温泉を済ませ、あたし達は部屋に戻る。

そして


「カンパーイ!」


プシュッ!


売店で買ったビールとつまみで宴会を始めた。


「はぁ〜うまいっっ。楽しい〜。」


りかが幸せそうに言う。


「ほんとに、こんな贅沢しちゃって、出させてくれた家族に感謝だよ。」


家族思いの真美ちゃんらしい。


「ね〜、もう半分終わっちゃったね。明日のこの時間には現実に戻らされてるんだよね。うちら。」


みんな、それぞれの思いを語り出した、


「そういえば、雅ちゃん浮気相手とどうなったの?」


塔子が思い出したように言う。

え!?言ってなかったっけ?


「別れたよ。1年くらい前に。」

「そうだったの?」


あたしはビールをグビグビ飲み、つまみの6Pチーズの紙を剥く。


「所詮、遊びだしね、旦那にバレる前に別れて良かったよ。」


内心、思い出すと泣けてきそうなのを必死で強がって隠した。


「そうだね、良かったよ。もうこういうのはやめなよ。」


塔子に強めに言われ・・・うん。もう懲りた。こんな思いは、もういいや。


「ん〜?どうしよっかな。あたしはオンナでいたいし。」


落ち込んでると思われたくなくて、気持ちと逆な事をいっちゃった。


「はぁ~。もう呆れるわ。」

「ねえ、どうして別れたの?」


呆れる塔子の隣で、りかちゃんが興味津々に聞いてくる。

りかちゃんも彼氏と別れたし、同志だと思われてるのかもしれない。

りかちゃんこそ、なんで別れたのか、すっごい気になる。


「なんでって・・・彼、職人だったじゃん。そっちに力を入れたかったみたいで・・・捨てられちゃった。」

「え〜?なんか切ないね。」


そう思ってくれる?真美ちゃん。優しいな。


「切ないかぁ?」


塔子がしらけた顔をする。


「だってさ、仕事か、恋人かって事で、彼は仕事を選んだんでしょ?切ないじゃん。ねえ?雅ちゃん。」

「はっ。不倫だよ〜?ちっとも切なくない。」


塔子に、あたしの気持ちなんて分かるわけ無い。あたしは話をそらす為に、テレビをつけた。

今、人気のNI7のCMが流れてる。


「この人達、人気だよね~。いっつもテレビ出てるよね〜。」

「7人組だよね。ダンスも歌も上手いし、全員イケメンだよね。」

「うちのエステのお客さんがさ、このセンターの、なんていう子だっけ。NEGUMI君・・・だっけ?大ファンなんだって〜。」


オバサン達がイケメンアイドルで盛り上がる。


「MEGUMIって本名なのかね、男の子でMEGUMIなんてさ。」


あたしはふと思った。


「彼女いるのかね〜いたとしても大変だよね。こんな人気の子と、コッソリ付き合うの。」

「いるんじゃない?こんなイケメン。みんなコッソリ付き合ってるよ。」

「どんな人とかな。同じアイドルかね。」


オバサン達は妄想話と噂話が大好きで、あたし達はノリノリだ。


「うちらくらいの人だったら笑えるね〜。」

「無い無い。」


りかちゃんの一言に、あたしと塔子は同時に手を左右に振った。


「やだぁ〜」

真美ちゃんのカワイイ声。


「真美ちゃん、大丈夫?」

「もう、酔っぱらい。」

「ごめ〜ん。」


手を滑らせたみたいで、真美ちゃんはビールをぶちまけてた。


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