好きです

今日はいるかな。

彼の美容室の前、遠くから探してみる。


「いた!」


お目当ての美容師さん、新名さん♡

仕事してる姿ステキ。

今日こそ言おう!

付き合って下さいって!

よし!

あたしは今日こそ思いを伝える為に気合いを入れて、彼が仕事を終えるのを待つ。


夜8時を回った。

そろそろ終わるかな。

ドキドキ・・・

もし・・・上手くいったらどうしよう。


あ!

出てきた。


「あのう!」


自分が思ってるより大きな超えで呼び止める。

やだっ。恥ずかしい。


「畠山さん。」


驚いた顔の新名さん。


「どうしたの?こんな時間に。学校の帰り?」


彼は優しい笑顔で話しかけてくれる。

言おう。言うんだ。


「新名さん、あの、ずっと好きでした。

できたら、付き合ってください!」


驚いた顔で、少し黙りこむ。

当然だよね、ただのお客さんにイキナリ告られるんだもん。困るよね。


「ごめんね。気持ちは嬉しいんだけど・・・。」

「そうですよね・・・いいんです!気にしないでください!あたしは、気持ちを伝えたかっただけなんで・・・すみません。失礼します。」


頑張って、とびっきりの笑顔を作った。

彼を困らせたくない。


「彩華先生、例の好きな人と、どうなったの?」

「ん?ナイショ。」

「え―、知りたい〜。」


奈那、理那ちゃんが興味津々に聞いてくる。

フラレてた直後に、この質問。

キツイなぁ。


「じゃあ、今日はここまでね。」

「は〜い。ありがとうございました〜。」


玄関まで見送ってくれる。


「先生、またね。」

「気をつけてね〜。」

「ありがとう。またね。」


しばらく夜道を歩くと・・・

誰かついてくる。

気のせいかな。

あたしは少し早くあるく。

すると、後ろの人も早歩きになる。

気のせいじゃない。

どうしよう。

怖い!

あたしは走りだす。

誰か、誰か助けて!

あたしは追いつかれ、手をつかまれた。

イヤっ!!

誰か!!


「畠山さん!」


目の前には・・・新名さん。


「たっ助けて下さい!」


あたしが思いっきり叫ぶと男は逃げて行った。


「どうしたの?大丈夫?」


あたしは力が抜けて新名さんにしがみついた。


「ありがとうございました。ご迷惑おかけして、すみませんでした。」


アパートまで送ってもらい、お礼を言う。


「いや。気をつけてね。」


気まずい。

さっきフラレた相手に助けてもらって、送ってもらうって。


「じゃあ。」

「ま・・・待ってください・・・」


思わず引き止めてしまった。

何をしてるんだ。どうしようって言うんだ。あたしは。


「彼女・・・いるんですか?」

「・・・うん・・・」

「・・・そうですか・・・」


しばらくの沈黙。


「あたしは、まったく無理ですか?」

「?」

「彼女と結婚とか・・・するんですか?」

「・・・わからない。」

・・・・

「じゃあ、諦めなくてもいいですか?」


あたしは新名さんの手をそっと握ってしまった。


「ごめん・・・今は、なんとも言えない。」

新名さんは、あたしの手をそっと離し、行ってしまった。



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