不登校児の親

「ほんとに、ありがとね〜。ご迷惑おかけします。」

「はい。ほんとに、ご迷惑かけられてます。」


雅ちゃんとランチに来てる。

鉄筋むき出しの店内と、アンティークな家具。

店員さんも、オシャレな私服で、うちの近所の人気店。


まさか、あんなに不倫を批難した雅ちゃんに、自分の娘が、お世話になるとは・・・


「まあ、お世話するのは良いんだけど、まさか紫恩と、奈緒ちゃんが付き合ってたなんて全然知らなかった。塔子は知ってたの?」


そう。

うちの問題児、奈緒は、雅ちゃんの1人息子の紫恩君と付き合ってた。

小さい頃から良く遊んでたんだけど、お互い思春期になり疎遠になってたと思ったら・・・


「でも付き合ってたって言っても3ケ月くらいだってね。まだ浅いね。」

「学校行かないで何やってんだか。」

「奈緒ちゃん、いつまで行かないつもりでいるのかね。そろそろ単位も危ないんじゃない?」


雅ちゃんはゆずスカッシュを飲む。


「うん。ちょうど今、夏休みに入ったおかげで、なんとかなってるんだけど、そろそろ、どうするのか決めないとね。」


はぁ〜

ため息しか出ない。


「紫恩にも言っとくけどさぁ、難しいよね。子供の事って。大人になれば、学校がどんだけ大切かわかるんだけど、今って実感ないんだよね。結局、今まで親に守ってもらって、何とかなってきちゃってるから、学校行かなくても、何とかなるって思ってるんだよね。きっと。」

「ほんとだよ。

早く大人になれ。

てか、早く学校行け。」


◇◇◇◇◇


「なあ、お前、そろそろ帰れよ。」

「ん〜?」


2週間前から、幼馴染兼、彼女の奈緒が俺の家に入り浸ってる。

もちろん部屋は別々だけど・・・


さっきから、俺のベットの上で、ずっとスマホをいじってる。

仰向けに寝転がって、Tシャツね裾がまくれて白いウエストが見えてる。


「腹が見えてるぞ。」

「うるさいなぁ。」


スマホを横に置き、俺を見る。


なんだよ。


「来て。」


え。


「ダメだ。何もない条件で、お前を泊めてるんだ。それだったら、家に帰れ。」


俺だって、必死で自分を止めてるんだ。


「じゃあ、家に帰るって言ったら、こっちに来る?」


そうきたか。

迷う。


「あたし達付き合ってるじゃん。

3ケ月付き合ってたら、ヤっても、おかしくないよ。」


それもそうだ。


「ほんとに帰るか?」

「うん。ヤったら。」


俺は、奈緒に近づく。

横たわる奈緒に、優しくキスする。


「いいのか?」


奈緒は頷く。

ゆっくり、Tシャツの裾から手を入れる。

奈緒の息遣いが少し荒くなる。

俺もドキドキしてきた。


「紫恩ー!奈緒ちゃーん!ケーキ買ってきたよー!」


バタバタ!


俺は急いでベットから降りて、奈緒を部屋から追い出した。


「おばさん、ありがとう〜」


奈緒は髪を直しながらリビングに降りて行った。


あーーー!!!

帰って来るの、早えよ!!!


◇◇◇◇


夏休みでも教師の仕事はたくさんある。


うちのクラスにも不登校の生徒が1人いる。

楢崎久遠ならさきくおん君。

読書が好きで、休憩中は、よく1人で本を読んでいた。

仲の良い子は数人いて、たまにその子達と話す姿は見かけたけど、基本1人でいた。

なるべく気にかけていたんだけど、クラスのやんちゃ坊主の空閑漣くがれん君がチョッカイをかけたのをきっかけに、来れなくなってしまった。

今から、久遠君のお宅に様子を見に行く。


「又吉先生、わざわざ、ありがとうございます。」

「どうですか?久遠君の様子は。」

「相変わらず、ご飯意外は部屋から出てこなくて、昼間は寝てて、夕方から起きて朝までスマホをいじってるんです。

注意すると、死んでやるって暴れるし・・・

もう、どうしていいか。」


・・・・

うちと一緒だ。

気持ちわかるよ。お母さん。


「とりあえず、夏休みの間は、私もできる限り伺いますが、お母さんもよく見ててあげてください。なるべく・・・昼夜逆転しないように・・・

よかったら、2学期が始まったらスクールカウンセラーの先生に相談してもいいかと思います。」


人のアドバイスするくらいだったら、自分の子なんとかしろよって感じだけどね。


あたしは久遠君の家を後にした。


◇◇◇◇


夏休みも終わり、今日から新学期が始まる。

奈緒は相変わらず山内家に入り浸ってる。


はあ〜


「奈緒さぁ、大丈夫なの?

紫恩君と付き合ってるんでしょ?そのうち妊娠しちゃった・・・とか言い出したらどうすんの?」

「バカな事言わないでよ!」


でも、無いとも限らない。


あたしと稟はトーストをかじりながらテレビを見る。


♫♫♫


スマホが鳴った。

学校からだ。

なんだろう?


「おはようございます。又吉です。

え!?」


あたしの声に稟が驚く。


「どうしたの?」

「久遠君が・・・」


震えが止まらない。

自殺未遂したって・・・。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る