三角関係

奈那と理那。

今日から2人、家庭教師に来てもらう事になった。

今年は高校3年生。

大学受験を控えて本腰を入れる事にした。


ピンポーン


インターホンが鳴った。


「はじめまして。家庭教師に派遣された畠山彩華いろはと申します。」

「はーい、どうぞー。」


肩までの黒いストレートヘア。

色白で、大きくくっきり二重が可愛らしい、大学3年生、21歳の女の子だった。


「よろしくお願いします。

双子の姉の奈那と、妹の理那です。」

「よろしく、奈那ちゃん、理那ちゃん。」

「よろしくお願いします。」


奈那も理那も少し緊張しているみたいだった。


「じゃあ先生、1時間くらいしたら、お茶持っていきますね。」

「ありがとうございます。」


3人は、2階に上がって行った。


旦那はまだ仕事から帰ってこない。

あたしは唇に指をあてる。

キス・・・しちゃった。

思い出すと、身体が熱くなるのがわかる。

息子でもおかしくないような若いコと・・・


あたし鏡を見る。


どこがいいのかな。

こんなオバサンの。

年齢のわりには童顔だから、若くは見られるけど、いくらなんでも20代の子に好意を持たれるなんて。

もしかして、愛君、お母さんいないとか?

小さい時に亡くなったか、離婚してて母性に飢えてて、その感情と恋と勘違いしてるとか?

確認しよう。

勘違いは早めに気づいた方がいい。


あたしはラインを送る。



愛君からだ。

早い!


「真美さん?どうしたの急に(笑)

俺、母親いるよ。家族仲いいよ。なんで?」


あ、お母さんいるんだ。

じゃあ、なんであたし?

ああ、わからない!


「愛君、同年代の子と付き合った事ある?」


もしかして、オバサン専門・・・オバ専!?



「あるよ(笑)何人か(笑)真美さん、今から会う?」


ダッダメダメダメダメ!!

会ったらきっと感情抑えられなくなっちゃう。


「それは、できません。」



「俺は年上が好きとかじゃないよ。

ただ、真美さんの事がかわいいだけ。

真美さんの事が好きなだけ。」


かっかわいいって・・・////

かわいいなんて、あたし47だよ?

本気で言ってるの?


「お母さーん、休憩だよー」


!!もうそんな時間?


あたしは急いでスマホをポケットにしまい、3人分の紅茶とお菓子を持って2階に上がる。


「彩華先生、彼氏いるの?」


奈那が興味津々に聞く。


「奈那、初対面で失礼よ。」

「だって、彩華先生、かわいいんだもん。」


彩華先生、照れながら紅茶を飲む。


「彼氏じゃないけど、好きな人は・・・いるよ。」

「えーーー!どんな人!?年上?年下?」

「コラッ理那。」

「いいじゃん。別に。」


と・・・いいつつ、あたしもちょっと興味ある。


「年上・・・行きつけの美容室の人なの。

美容師さんだから当然なんだけど、オシャレで、かっこ良くて・・・この間ね、急に雨の降っちゃって、あたし重なった持ってなくて困ってたら、私物の傘貸してくれて・・・優しい人なんだなって・・・」


かわいい。

彩華先生は恥ずかしそうに頰を赤らめた。

こんな可愛らしい人なら、相手の人が堕ちるのは時間の問題だろう。


「あ、お母さんすみません。あたし勉強教えに来たのに、こんな話しちゃって。」

「え?いやいや、大丈夫です。

頑張ってください!応援してます!」


あたしはガッツポーズをした。


「ありがとうございます。」


◇◇◇◇◇


今日は朝から弁当屋の仕事。


今日もせっせとコロッケを揚げる。


「おはよう、真美ちゃん。」


ふと見ると、りかちゃんだった。


「りかちゃん、おはよう。今から仕事?」

「うん。今から。コロッケ弁当2つちょうだい。」

「はいよ。」


りかちゃんの隣には、高身長のオシャレなイケメンの姿が。


「彼は?」

「会った事なかったっけ?

一緒に暮らしてる彼、奏斗。」

「はじめまして。新名にいなです。」


ああ、話では何回か聞いてたけど実際に会ったのは初めてだ。

170センチあるりかちゃんと並んでも、さらに10センチくらい高いスタイルの良さと爽やかな笑顔。

誰が見ても、お似合いのカップルだ。


「はい。コロッケ弁当2つね。」

「ありがとう。じゃあね、頑張ってね。」

「うん。りかちゃんもね、ありがとね。」


奏斗君は、会釈をし、りかちゃんと歩いて行った。


その時のあたしは、遠くから、「誰か」に見られている事に気づかなかった。



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