これは裏切りですか?

「ねえ、旅行行こうよ。」

「いいよ。どこ行く?」


ホテルのベットの中、誠が、あたしに囁く。


「雅子はどこに行きたい?」

「う〜ん。そうね・・・考えとく。」


軽くキス。


「愛してるよ。雅子。」


誠が、あたしを抱きしめる。

この感覚・・・

体がゾクゾクする。

女として愛されてるって、すごく実感できる。

妻でもなく、母でもなく、あたしを1人の女としてみてくれる。こんな感覚って何年ぶり?


「あたしも・・・好きよ。誠・・・」


再び、あたし達は重なった。


◇◇◇◇◇◇


「北海道はどう?」


ホテルを出て、誠の車の中


「北海道いいね。」

「海に面した露天風呂があるホテルをネットで見た事あるの。そこ行きたい。」

「露天いいね。混浴?」

「もう〜」

 

♫♫


「旦那からだ。じゃあね、またね。」

「もっと家の近くまで送るよ。」

「ダメよ。バレたら大変な事になっちゃう。」


チュッ


あたしは誠の車を降りた。


◇◇◇◇◇


「どこ行ってたの?」

「塔子と買い物行ってた。」

「そうなんだ。何か良い物あった?」

「ううん。とくに、結局、お茶して帰ってきた。」


今日は旦那と2人きり。

長男の紫恩しおんは友達の家にお泊りだ。


「このパスタ美味い。」

「そお?ありがと。」


2人の食卓。

少しの後ろめたさから、あまり会話が進まない。


「たまにはさ、紫恩も大きくなったし、2人っきりで旅行に行かないか?」


はい?


「りょ、旅行?なんで?」

「なんでって・・・」


ああ、なんでって、おかしいか。


「なんで急に。今まで、そんな事言い出した事ないのに。」


旦那はフォークを置く。


「ずっと思ってたんだ。50歳前になって、子育ても一段落して、仕事も安定してて、これからは、お前との時間をゆっくり作っていってもいいんじゃないかって。」


え、何それ。

そんな事改めて言わなくても。


ゴクリとお茶を一口飲む。


「今夜、いいか?」


はあ?!


ちょ・・・ちょっと待って。

さすがに今日は・・・もうヤってきちゃったし。しかも3ラウンド。

さすがに4ラウンドは・・・


「今日はちょっと。」

「生理?」

「いや、そういう訳じゃなくて。」

「久しぶりじゃないか、もうずっとヤってないし。」


なに?なに?


旦那が立ち上がり、後ろから抱きしめる。


「いいだろ。」


耳たぶにキス。


おっおいおい。どうすりゃいいんだよ。

大丈夫なのか?あたしの下半身!!


◇◇◇◇◇


ザーーーーーー


今日は朝から大粒の雨。

おまけに雷も鳴ってる。

こんな日は、お客なんて来やしない。

ああ、ヒマだ。

そうだ、誠との旅行の日にち決めなきゃ。


ピンポーン


「いらっしゃいませ。」


入り口には、スラッとした背の高い若い女の子が立っていた。


「奈緒ちゃん?」

「おばさん、久しぶり。」


塔子の次女の奈緒ちゃん、めっちゃ久しぶり、中学校の時以来だ。

小学校までは同じ町内って事もあって、しょつちゅう、うちの紫恩と遊んだりしてたけど、お互い思春期になってからは行き来がなくなっちゃったな。


「どうしたの?こんな雨の中、しかも雷鳴ってたでしょ。傘立て、そこにあるから。」


奈緒ちゃんは近くにあったイスに座った。


「おばさん、あたし家出しようと思って。」

「は?」


家出?


「どこに?」

「おばさんち。」

「なんで?」


はあー


奈緒ちゃんはため息をついた。


「ママにわからせる為。

おばさん、あたしが不登校って知ってるでしょ。ママは自分の事ばっかりで、ちっともあたしの事見てくれないから、家出して、頭の中、あたしでいっぱいにしたいの。」

「う〜ん。奈緒ちゃんが、ママの事が大好きで構ってほしいのはわかったけど・・・なんでうち?」

「紫恩がいるから。」

「彼氏がいるから。」

「かれし?」

「うん。」

「誰が?」

「だから紫恩だって。」

・・・・・

はあああ?



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る