アイドルの恋

今日は奈那と、理那とカラオケに来てる。

カラオケなんて久しぶり〜。

歌いたい歌はイロイロあるんだけど、今の歌って本当、難しい〜。


「あたしドリンクバー行ってくるね。」

「は〜い!」


部屋を出て、角を曲がったところにドリンクバーがある。

なんにしようかな・・・


「真美さん?」


え?

振り返ると


「愛君。」

「真美さん、カラオケ来るの?」

「愛君こそ、ここでバイトしてたの?」

「うん。レッスンが無い時は、ここでバイトしてるんだ。」


バイトの制服、かっこいい♡♡


!!


いかん、いかん!

この間、雅ちゃんの件があったばっかりだ。

いや・・・でも・・・

あたしのは浮気じゃなくて、アイドルを見てる感覚だから、大丈夫か。


「そっか、頑張ってね。」

「ありがとう、あ、そうだ。」


立ち去ろうとした時、愛君が、あたしの前に立ちふさがった。


「真美さん、この間の・・・」


あ・・・


「迷惑・・・だよね。ごめん。」

「ああ・・・いや・・・イベント見に行った時に、少しなら・・・」


な、何をいってるんだ!!あたしは!!


「え、ほんとに・・・?」

「う、うん。」


愛君は微笑んだ。


「じゃあ、本当にイベントの時、誘うから。」


ドキン・・・

ドキン・・・


どうしよう・・・

なんなの?この感覚・・・。

愛君は、別にあたしを好きとかじゃなくて、ただの社交辞令なのに・・・

なんで、こんなにドキドキするの。


あたしは部屋に戻る。


「あ。きたきた。お母さんの番だよー!」

「うん、ありがとう。」


落ち着け、落ち着け。

一度イベントに行って終わり。

そうしよう。


◇◇◇◇◇


イベント会場。


地下アイドルや、アイドルの卵のステージで盛り上がってる。


愛君に招待されて来たものの、周りは若い女の子ばかりで、なんとなく気まずいな。

とりあえず、なんか食べよ!

グルメフェスとのコラボだから、いろんな美味しそうなものがある。

う〜ん。

何にしようかな。


「次、NI7《エヌアイセブン》よ!行かなきゃ!」


若い女の子達が何人か走って行く。

NI7・・・


パンフレットを見てみる。

愛君のグループだ。


あたしは人混みの最高列で、遠慮しながら見る。


「次はお待ちかね!NI7です!」

「キャーーーーーー!」


地面が揺れそうな黄色い声援に、あたしは圧倒されながらも、愛君を見つけた。


曲が始まり、愛君が踊りだす。


曲に合わせて手拍子が始まる。


ステージの上の愛君は、普段見せる姿とは、全く違って、キラキラ輝いてた。


曲が終わり、大歓声の中、愛君達は、ステージから降りた。


なんともいえない感情が胸を締め付ける。

頭の中は、愛君でいっぱいだ。


帰ろ帰ろ。


イベント会場を出てバス乗り場まで向かう。


グイッ


後ろから手首をつかまれる。


え!

なに!

振り返るとフードを深く被った・・・

愛君。


え・・・

どこに行くの?

あたしは愛君に手をつかまれたまま走り出す。


近くのビルの非常識階段。

愛君がフードを取った。


「真美さん、来てくれたんだ。」

キラキラした瞳。

どうしよう・・・

そんな瞳で見られたら恥ずかしくて・・・


「うん。約束だったし・・・」


目を合わせるのが恥ずかしくて、うつむいていると、愛君の大きな手が、あたしの顔をあげる。


「ありがとう。」


愛君の顔が、近づいてくる。

え、え、

愛君の唇が、あたしの唇に重なった。

あたし、キスしてる!?

やだ。どうしよう。


愛君の唇が、離れては、また重なる。

ダメなのに、離れなきゃいけないのに・・・

あたしは、愛君を拒む事ができなかった。



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