平凡の平凡による平凡の為の主婦
あたしの人生って、何なんだろって、たまに思ったりする。
まあまあ、可愛くて
まあまあの高校卒業して
まあまあの短大卒業して
まあまあのサラリーマンと出会い
まあまあの恋愛をして
まあまあの子供に恵まれ
まあまあの結婚生活を送ってる。
いいんだけどさ、普通でいいんだけどさ。
だけどさ、たまにドラマ見たりして思っちゃったりするわけよ。
この俳優さん達も、もともとは普通の人達じゃない、それが役者になるという夢を持ち、努力をして、運を掴んで、今こうしてテレビに出てるじゃない。
何が言いたいかっていうと、あたしにも、もしかしたら何か才能があるのかもしれない。
それが何かは、わかんないんだけど、もしかして何かのきっかけがあって、それが開花されたら、あたしは平凡な弁当屋でパートで働く主婦じゃなくなるかもしれないのよ。
YouTubeやってみようかな。
もしかしたらカリスマ人気YouTuberになって大好きな俳優さんが、あたしの事を知ってくれるかもしれない。
でも・・・ネタが思いつかない・・・
大食いでもないし、何かをやってみる勇気もない、ダンスもできなきゃ、歌も上手くないし。
はあ、そして今日も、お弁当のコロッケを揚げる。
平凡な主婦として、平凡な弁当を作る。
「すみませーん。」
「はーい。いらっしゃいませ。」
あら、よく来てくれるイケメンお兄ちゃん。
「おはよう。今からレッスン?」
「うん。今日は、今から。コロッケ弁当1つ。」
このお兄ちゃん、イケメンのハズでアイドルの卵。毎日ダンスや歌のレッスンをして、たまにイベントで歌ったりしてるボーイズグループのメンバーみたい。
芸名や、グループ名は恥ずかしいって言って教えてくれないんだよね。
「ねえ、名前なんていうんだっけ?」
「僕?木下。木下
「めぐみ君っていうの?めずらしいね!」
「うん。名前だけだと、よく女と間違われる。お姉さんの名前は?」
「あたし?三次。」
「下の名前は?」
え・・・下の名前?
若い子に聞かれると、ちょっと照れちゃう。
「真美・・・」
「真美さん、ライン教えてよ。」
「え!?」
なんだ?なんだこの展開は!
「ライブの宣伝とかしたいから。」
ああ、なんだ。そういう事か。
あたしは愛君とラインの交換をした。
一瞬ドキッとした自分が恥ずかしい。
「ただいま。」
「おかえり〜。お母さん、お腹すいた〜。』
「うん。今からやるから待ってね。」
♫
ラインガ鳴った。
愛君からだ。
「真美さん、今日はイキナリ、ライン聞いちゃってすみません。教えてくれて、ありがとう。また近々イベントあるんで、もし良かったら来てください。」
社交辞令ね。
まあ、彼もこうやって営業しなきゃいけないのね。大変だ。
「了解。」
あたしは返信を押した。
「真美、今週末ドライブ行かないか?たまには2人で。」
「いいじゃん、お父さんと、お母さん行ってきなよ。」
奈那と理那が嬉しそうに言う。
そうね。たまには旦那とデートもいいかもね。
♫
また愛君からライだ。
「こんな事、急に言って戸惑うかもしれないけど、俺、前から真美さんと、もっと話せたらなって思ってて、良かったらランチ行きませんか?」
へっっ?
あたしは思わずスマホを隠した。
ま、ま、待って・・・!
これって・・どういう意味!?
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