拾伍:形質
「回復、するのか。」
弱った蟷螂に僕は呆れたような、驚いたような、冷たいような口調で詰めた。
「驚いた、だろうに。これが、
「瀕死か。
銃声が鳴り響いた後、
「どうだい
手洗い場で手を洗っている。硝煙反応で手が汚れるのはごめんだ。少しでも落ちるよう、石鹸で入念に洗っている。
「そっちは問題ないよ
「無理もないね。」
蜥蜴の遺伝子を取り込んだ、遺伝子改造なんて物騒な話だ。
「ところで驚いたよ清、まさか鎌に、酸が仕込んであるなんて。」
蟷螂に切られた癖っ毛の部分は、明らかに変色していた。今もじわじわ溶けている。
「大分濃度が濃そうだよ?大丈夫?」
「さあね。」
酸の部分を
翌週の月曜日。先日の戦闘の考察が終わってないまま週を越してしまった。
蟷螂との戦闘で色々と壊れた箇所は、一日も過ぎれば元通りになる。何故なのか。
「ねぇ先生、なんか難しい顔してるよ。」
「!?」
子供と言うのは時たまに胸を射抜く言葉を発する。
「君の顔が簡単なだけだよ。」
「いやそれはないよ。」
そしてちょっとした冗談に対し、かなり辛辣なツッコミをする。
実習生が進路指導をしていいなら、多分彼と手合わせするだろう。でも子供相手に手加減しないでやるのは流石にキツいか。なんて思っていると、
「霧斗先生、よろしいですか?」
すかさず返事をし彼について行くと、
「オヒサシブリ。」
やや怒った、いやかなり怒った表情を見せた飛鳥瑠くんが居た。
「あんれま、どったの水田ぁ。」
「二人にさせて頂ければ。」
すると外野はすぐに立ち去った。
「こないだのこの資料、どうなっているんだい。」
飛鳥瑠くんが
「どーゆー意味?」
何をどう問いたいのか。
「確かにその電脳(清のこと)の分析は事細やかになされているが、これだけ重要な問題をなぜ衛星通信で送ったよ。」
「なに、まさか総括会議で検討しろとでも言うのかい?」
「それはそれで困るからやめてくれ。」
「それじゃ、何が言いたいのさ。」
一瞬空気が凍り付き、
「お前、後7日で決着をつけろ。」
「7日?何で?閣議決定でもあったの?」
「行政が顔を出すな」
飛鳥瑠くんが胸元から一つ帳紙を出してきた。
「はっ、これは……」
内容を目視した瞬間、とてもとは言えないほど驚いた。
「健闘を祈る」
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