拾参:生徒たち

「こんにちは、春野はるの 霧斗きりとと申します。どうぞよろしくお願いします。」

菱先生主導のもと、僕の紹介が始まった。

「霧斗先生に質問ある人ー?」

子供はすごい。めっちゃ手が挙がっている。保安部で同じ質問したら誰も挙がらないだろうに。

「先生の好きな食べ物ー!」「パラパラチャーハン」

「先生の好きなスポーツ!」「野球に一票」

「先生の好きな國!」「皇帝陛下万歳!!!」

「付き合ってるひといるー?」「ゼロー!」

「人生最大のモテ期は?」「これからー」さや(爆笑)

「黒歴史一つー!」「空飛べるって言って窓から落ちて骨折!――」

「――って、途中から何聞いてんだよ!」

クラス全員爆笑。第一印象はそんなに悪くなさそうだ。ただ、僕の心がもう持たない……

清(HAHAHA)


 お昼。敷地内のどこで食べるかは自由。

「ねぇ先生、なんで先生やりたいと思ったの?」

「身近な人には憧れを抱くさ。えいくんにも、そう思う時がいずれ来ると思うよ。」

 二人一緒に飯を食べる。ベンチの隣にいるのはえい 義治よしはるくん。4-3の所属生徒。クラスにどんな子がいるのかはすでに把握済み。彼は成績も良く、優良な生徒だ。

「たしかに。ボクは保安官さんになるんだ。11月に試験があるんだよ。そのために、今勉強もフィジカルも頑張っています!」

うん、そうか。だけど、、、

 何でよりによって保安官!?夢を持つことは大事だが何故保安官?しかも現役が隣にいるんだぞ!?もしや、もう彼には正体がバレているのでは?いや落ち着けそれはない。

「先生どうかした?」

「!?」気を取り直して、

「夢は追うだけおっておきなね。」

夢も当てもなく人生を歩んでほしくない。うん。


 一応、社会科の教育実習をするので、菱先生の授業にはついて行っている。特例の場合は別だが、、

 今思えば、修学旅行に同行するというのは元々、4年生に配属するという暗示が込められていたのかもしれない。

「修学旅行のオリエンテーションをしまする。」

「~まする」というのはここら辺の方言なのであまり深い意味はないです。はい。

 河都での修学旅行。二泊三日での思い出旅行は彼らにとって、とても大事なものとなるだろう。中には初めて新幹線に乗る子もいるかもしれない。そういうところを含め、丁寧に説明がなされた。実習生がのこのこ旅行について行くというのも、図々しい話だ。(万歳)


 事前に叩き込んだ情報通りの生徒たち。帰るときにはひと挨拶してくれる礼儀もなっている。職業病で会釈をしてしまいたくなるが、挨拶は挨拶で返す。意外と気を付けないと大変。

 そうして二日目の潜入が終わり、今日も異変なし。僕が乗り込んでいると知っているのは前日、植え込みに張り込んでいた5人の先生と菱先生だけ。

リークでも無い限り、人喰いが落ち着くことは無いと踏んでいる。

 校内全てにおいて盗聴器や爆弾などと言った不審物は無かった。居るなら早いところ出て来て不安を和らげさせて欲しい。

 三日目、四日目も異変は見つからなかった。

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