第34話 解決酒
「いや、特に何もないが。考えすぎだ」
他四人は唖然とする。旧知の永倉さんでもだ。
「お前がそんな動機で事をするか!嘘だ!」
「黙れ。お前に俺の何が分かるんだ」
「性格が悪いことがようく分かるね!何を隠してる、言え!」
「…好きな女の友人を助けてやろうと思っただけだ。手伝わされただけとはいえ、首を突っ込んだのに最後まで面倒見ないのも気に食わないしな」
一炉朱現は下戸であり、斎藤一は酒が入るとなんでもしゃべる性だった。
言い合いを続ける二人。そっとるかくんに耳打ちする。
「ねえ、これどうすんの。相性悪すぎない?なんか恥ずかしいんだけど」
「京、朱現と斎藤の酒癖知ってただろ。なんで飲ませたんだよ。てかおっさんも止めろよ」
「俺は知らなかったぞ。俺の知ってる斎藤は人前で酒なんか飲まない」
二人がこちらに視線を集める。
「絶対京のせいじゃない。お酒持ってきたのも飲ませたのも京だけど違う」
「見苦しいぞ」
姫崎京子と黒鉄るかは酒豪であった。永倉新八は案外、静かに酒を嗜むのが好きだった。
朝、巴さんが居間に来ると潰れた二人と酒を飲み続ける二人、大の字で寝ている一人が転がっていた。酒瓶は散らかり、灰皿からは吸い殻が溢れそうだった。
「…起きろお前ら!ここは酒場じゃねえ!」
各人、俺まで拳骨を食らい、その場は収まった。京と並んで歩く。
仕事を溜め込んだうえ帰宅もしていなかったため、署長からも咎められる。
「胡蝶ちゃんに笑われたよう…元気そうなら良かったんだけど…」
「頭が痛いな」
拳骨に二日酔いが響いている。
「外でお酒飲むなんて、どうしたの?」
永倉さんも言っていたが、一くんは滅多にお酒を飲まない。いつ襲われるか分からない。常にそう頭にあるものだ。
「不本意だ」
それだけ答える。京は会話がかみ合っていないと不満げだ。今回医者の娘に手を貸したのもそうだが、俺はあの空間が気にいっているらしい。気が緩んでいた。最近動きがない八朔の件も未解決なのにも関わらず。
その意図を汲み取ったのか、分からないが京はこう言った。
「別に、悪いことだとは思ってないよ。ここは幕末の京都じゃないからね」
この女には敵わない。
冬が、巡ってきた。
「お母さん、お兄ちゃん。また、寒くなってきたね」
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