第22話

 夏祭りで ういちゃんを分かれ道で待っている時に、ういちゃんのご両親に出会った。妹も来ていると言っていたが、姿が見当たらなかった。最初は、聞くのが怖かった。良くない予感がしたからだった。しかし、これからも好いていく以上 全て受け止めておきたい。あの 、と声をかけてみる。

「 うい さんと同じ学校に通っている 綴 です。急に声をかけてしまってすみません。 」

頭を軽く下げる。触れてはいけないことに触れている気しかしなくて、手汗が出てくる。

「 綴さんね 、いつもういから話を聞くのよ。仲良くしてくれて、ありがとう。 」

ういちゃんのお母さんが優しい声で話してくれて、とてもほっとした。私は 、深呼吸をしてから単刀直入に聞いた。

「 …… 妹さんはご一緒ではないのですか。 」

ご両親はどちらも目を泳がせたり、下を向いたりした。やはりダメだったのだろうか。

「 あのね、ういには言わないでほしいんだけど、いいかな? 」

お父さんの方が、少しだけかがんで私の目線に合わせてそう言った。二回 こくこくと頷く。お母さんの方が目を伏せながら、口を開いた。


「 妹の るい は引っ越してきてすぐに、寿命で死にました。 」


時が止まった気がした。ういちゃんは、きっと妹がまだ生きているのだと勘違いしている。幻覚でも見ているのではないか。追い込まれているのではないか。そう思うと、口を抑えずにはいられなかった。ご両親は 軽く一礼してその場を離れていった。




 だから、ういちゃんを鳥居で見たとき、なぜだかぼろぼろと涙が零れてきて止まらなかった。ういちゃんは何も悪くないよ。おかしくなんてないよ。彼女の手首の傷は、ずっと自分を必死に守ってきた証だった。抱き締めてあげたくて仕方がなかったが、膝が進むなと言っている。ういちゃんが振り向く前に、遠回りして帰ることにした。歩きながら自分の左腕を見てみた。包丁で何度も殴るように傷付けた跡は、後輩とお揃いだった。

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