第12話

 今日は、久しぶりに綴先輩と帰る約束ができた。最近は学校内で出会う度に話すようになったが、二人きりで帰るのが 一番優越感に浸れる気がする。


「 ういちゃん 、 今度の夏祭り行く? 」

 もう夕方なのに、まだまだ日差しが強い夏はあまり好きではない。春くらいの暖かさが一番好きだ。下敷きで仰ぎながら、こくり と頷いた。先輩は、友達とでも行くのだろう。この村に来てから初めての夏祭り。通学路沿いにある掲示板で見てから、実はちょっと楽しみにしていた。

「 それなら 一緒に まわろうよ。 」

 思わずパッと先輩の目を見た。一緒に話せる同級生がいるのに ういを誘ってくれるとは、なんて優しい人なのだろうか。夏祭りまでに自分磨きしなければ、と今更だが焦る。

「 あの、夏祭りって何日でしたっけ。 」

「 ん~と 今週の土曜日。 」

「 今日って何曜日でしたっけ。 」

「 金曜日。 」

 ういは 一瞬フリーズした。明日だと…?!そういえば、同級生が 楽しみだね のような会話をしていた。綴先輩は ういの反応を見ては、再び口を開いた。

「 それで、どう? 私と行けそう? 」

「 もちろん 、絶対に綴先輩と行きます! 」

 返答したつもりでいた為 勢いよく答えてしまったが、先輩は へへ と嬉しそうに 笑みを零した。

「 じゃあ 、 鳥居の前で 6時に落ち合おうか。 」

 ういは こくりと頷き、心の中で復唱した。なんとなく、今日は眠れなさそうだなと思った。

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