第11話
「 桜木さん って、
ある休み時間 、普段と同じように 席に座って伏せていると、急に声をかけられた。たしか、この声はたまに絡んでくる
「 ええ … というか、涼風先輩って? 」
彼女は 眉間に皺を寄せて腕を組んだ。そんなに有名なのだろうか。
「 ほら、2年の。 関西弁話すイケメン。 」
うーん、そんな人いたっけ。あ、いた気がする。通学路で 自転車が来ているのを教えてくれた人がそんな感じだった気がする。葉月さんたちに見られていたのか。だからあんなにも騒がしかったのか。
「 で 、 手伝いって何? 」
葉月さんは、目を伏せながら口を小さく動かした。
「 手紙、渡してきてほしいの。夏祭り、誘うんだ。 」
ああ、そろそろ夏祭りが開催される時期か。毎年、この村では 夏祭りが開かれており、村が賑わう唯一の日と言っても過言では無いらしい。綴先輩は、誰かと行くのかな。今はこんなことを考えていても仕方がない、面倒だが逆らうとより面倒になる。
「 わかった、渡すだけで いいんだよね。 」
手紙を受け取ると 、葉月さんはすぐに 友達の方へ駆けていった。なぜ友達に頼まないのだろう。一軍女子の心情はいつまでも わからない。
昼休みになり、できるだけすぐに 渡して用事を済ませたかったため、小走りで2年生の教室へ向かった。窓から覗いてみると、彼は 反対側の窓の方で友達と話していた。あまり 知らない人に声をかけたくないが、なかなか こちらを見ないため、
「 す、涼風せんぱ~い … 」
と控えめに呼んでみた。すると、彼の友達の方が 肘で涼風先輩をつついて ニヤケている。一体何を勘違いしているのだろう。正直、ういは こういうノリが一番苦手だった。
「 あ、 また会ったな。どしたん? 」
すぐに駆け寄ってきてくれたお陰で 用事は早く済みそうだ。即座に頼まれた手紙を差し出す。
「 これ 、1年の葉月さんに頼まれました。 」
涼風先輩は 、ういの顔を見ながら 受け取った。
「 こういう仕事 押し付けられるん、一番面倒よな。ありがと。 」
キラキラと効果音の出そうな笑顔を見せて、友達の方に帰っていった。ただの優しい人で、少し安心した。
そういえば、涼風先輩と話している時に 結構近くの方から 視線を感じた。葉月さん、ここまで来れるなら自分で渡せたじゃん。そう思いながら、1年生の教室へと向かった。
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