第10話
「 …… 食べてくれませんか 。 」
自分でも何故こんなことを言ってしまったのか、分からなかった。絶対引かれた。もう先輩の顔を見れない。明日からどんな顔をしたら良いのだろう。ういは、恥ずかしさと後悔で顔を背けた。先輩は、何も言わずに手首を掴んで 指先に口をつけた。柔らかくて、少し熱い唇の感触が伝わる。
「 指先へのキスには 『 賞賛 』 って意味があるらしいよ。 」
なんで、そんな事を今言うのだろう。 先輩はこんな はしたない後輩の どんなところを賞賛しているのだろう。いや、もしかしたら、こういう事は みんなにも しているのかもしれない。
「 …そういうの 、勘違いしちゃうので辞めた方がいいですよ。 」
頬があたたかくなる。一度 先輩の口に入った指で、お箸を上手に持つことは もうできなかった。
あの後、先輩は 何もなかったかのように 再びお弁当を食べ始めていた。5時間目の授業を受けている最中だが、ういは教科書を読むフリをしながら ずっとさっきの時間のことを思い返している。指先に視線を向ける。先輩は、本当に罪な人だ。包容力があって、一瞬で人を虜にすることができる。先輩になら自分の事を もっと知ってもらいたい。 そう思うと同時に、先輩の幼いところ 、儚いところ、全部 他の人には見せてほしくないと思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます