第7話

 通学路を歩いているだけなのに、こんなに周りの人のことが気になるなんて、人生で初めてかもしれない。全部 つづり先輩のせい。実はずっと迷っていた。話しかけてくれるまで待つか、思い切って自分から話しかけにいくか。でも ずっと待つなんて、心がすり減りそ

「 後ろから自転車来てるで、 」

考えている途中で声をかけられた。道の端に避ける。先輩じゃない、誰かに声をかけられた。跳ね上がりかけていた心を、体の奥に押し戻された。

「 あ、ありがとうございます…。 」

振り返ると、同じ制服の男子が立っていた。前髪が目に かかりそうで、見ているこちらまで目が痒くなりそうだった。よく見れば、2年生の教室にいたような気がする。

「 いえいえ、後ろにも気いつけるんやで。 」

 方言の混じった言葉を話す少年は、ひらりと手を振って ういの横から歩いていった。

 自分も 再びぼんやりと歩き始めたが、同時に 周りにいた女子たちが ざわめき始めた。もしかしたら、良くないことしちゃったのかもしれない。冷たい汗が首筋をつたう。呼吸が浅くなる。今日はついていない日なのかもしれない。いつから、ついている日もあると思えるようになっていたのだろう。


 通学路で 他人の視線が怖くなって 、 早歩きで学校に向かったせいで 、校門を通る頃には呼吸が上手にできなかった。へたりこんだ時に先生が 保健室に運んでくれたらしい。今は 保健室の天井を見ている。もう二時間目が始まっている。いつもなら、中庭で考え事をしていたのに まさかこうなるとは。何かと保健室にお世話になったのは今回が初めてだった。

「 あ、 桜木さくらきさん 起きたね。まだ辛いかな。 」

眼鏡をかけた女性の先生だった。さくらなんですけど、辛いのは ずっとなんですけれど、なんて言えるはずもなくて 無言で頷く。この学校では、保健室は一時間しか使えないことになっている。症状が酷ければ、家に返されるらしい。ういは 結局教室に送り出されることになった。


 授業中に戻るのは気が引けたため、 休み時間に戻ることにした。今は 階段を登っている最中だった。先輩に会えないかな とつい期待してしまう。いつもなら早く帰りたいとか、嘘でもついておけば良かったとか思っていたはずなのに 。「 綴さーん 」と声が 後ろから聞こえていることにも気付かず、ういは考え事をしていた。

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