第6話

「 おねえちゃん 、おいしいね ! 」

 妹はまだお箸が使えないため、フォークで唐揚げを刺しながら ういにそう言った。家の廊下を歩いている時に見えた妹の背中が、つづり先輩と似ているように見えたことを引きずってしまう。人は不思議なもので、少しでも相手に引っ掛かりを覚えると 微笑みかけられなくなってしまう。お母さんも隣にいるので、変に質問をできず 黙々とご飯を食べた。

「 ういちゃん 、今日どこ行ってたの? 」

お母さんがこちらを見つめる。少し失礼なのでは?と思ってしまった。確かに、ういには 放課後 遊べるくらい仲の良い友達がいたことは なかった。少し間をあけてから、鳥居 とだけ答えた。どうしてかいつもより素っ気なくしてしまう。そんな自分に腹が立ってきそうだった。今日は早めに寝ることにした。


 布団に入っても、なかなか眠れない。ういの悪い癖で、一度考え事を始めてしまうと 深く考えてしまう。先輩は、明日も話してくれるのかな。今日の出来事は全部、夢みたいになってしまうのかな。夢を見た直後は覚えているけれど、気がつけば忘れている あの感じに。あれ、最近 夢なんて見ていない気がする。いやでも 夢は見ない方が 深い睡眠をとれてる ってことだったっけ…。


 ピピピピ ピピピピ

目を閉じたまま腕をバタバタさせてアラームを止める。ういが恐れていた明日になってしまった。やるせないが、仕方なく起き上がると 妹が部屋の端に座ってこちらを見ていることに気付いた。えっ、幻覚?

目を擦って再び見てみる。やっぱりいる。

「 おねえちゃんの方が いつも退屈そうだったよ。 」

何かが取り憑いたように、機械のように ういに呟いた後、すぐに部屋を出て行ってしまった。後ろ姿はいつもの はつらつとした妹の姿に戻っていた。













─── 退屈そうだね 、だなんていつ言ったっけ。

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