第5話
「 さ、暗くなる前に帰ろうか。ういちゃんの家まで送っていくよ。 」
風が吹いて まだ
「 大丈夫ですよ、連れてきてくれて ありがとうございました。 」
軽く会釈をすると、先輩は またういの手を掴んで歩き始めた。行きの時とは違って、手のひらに温もりを感じる。
「 通学路までは一緒に帰ろう。女の子一人じゃ危ないからね。 」
「 先輩も女の子じゃないですか。 」
「 私はいいの 、どうなったとしても。 」
なぜここまで自分を 捨て身のような言い方で話すのだろう、と引っ掛かる部分はあった。まだまだ先輩のことは知らないから仕方がないと思うことにした。
通学路とぶつかる十字路に着いた。綴先輩は真っ直ぐ道を進むらしい。ういは立ち止まって、一礼した。
先輩は、また明日 と手を振りながら歩いていってしまった。少しだけ先輩の後ろ姿を眺めてから、ういも 左を向いて歩き始めた。今日はいつもよりも感情が揺れ動いたからか、心身ともに疲れた。久しぶりに充実した一日を送ることができて、正直嬉しかった。しかし、今日は先輩と話すことができたが、社交辞令だったのかもしれない、と不安にも思った。なんとなく、明日が来てほしくない気がした。もしかしたら、もう話すことは無いのかもしれないと思ったから。
「 ただいま。遅くなっちゃった。 」
家に着くと、玄関で妹が出迎えてくれた。いつもなら ういが帰ってきても部屋で遊んでいるのに珍しいな、と思いつつも無邪気に笑う妹の頭を撫でる。この村には保育園と呼ばれる建物もないので、毎日が退屈にならないのか 心配になることがたまにある。妹と居間に向かう途中、とても良い香りがした。今日の晩御飯は唐揚げらしい。妹はスキップして ういを追い抜き、先に行ってしまった。妹の背中は、綴先輩と少しだけ似ているように見えた気がした。
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