第2話

 チャイムが 授業の終わりを知らせた。手にはさっき『 先輩 』が貸してくれた傘がある。仕方がない、教室に戻ろう。もしかしたら、傘を取りに来てくれるかもしれない。


 昼食を食べ終わり、昼休みに入った。クラスが騒がしくなる中、ういには友達と呼べる人がいないため一人寂しく席に座っていた。あの先輩は 初対面の自分に対しても優しくしてくれた人だ。きっと人気者なんだろう。いつもならば考えている事はどんどん逸れていくが、今日はずっと先輩のことを考えていた。

 しばらく待っているが、なかなか先輩の姿は見えない。先輩も、もしかしたら今の自分みたいに 待っているのかもしれない。そう思うよりも前に、脚が勝手に動いていた。

 傘を持って、上級生のクラスを目指して廊下を駆ける。ういは1年生であるため、2学年の教室を巡らなければならない。ただ、この高校は 田舎にぽつんと建っているようなところで、1学年に1クラスしかなく、同じ階にクラスがあることは救いだった。まずは2年生のクラスを覗くことにした。あまり他学年のクラスに行きたくないな とは思っていながら、先輩に名前を聞くためだ と自分の背中を押す。後ろのドアからできる限り気配を無くして覗いてみた。いない。数人で構成されたグループがたくさんあるが、どのグループにも先輩はいない。時計を確認してみた。昼休みは そろそろ終わってしまうらしく、ういは肩を落とした。

 3年生のクラスには放課後か、明日にでも行くしかないな。踵を返そうとしたとき、誰かの手が腰に触れて、そっと誰かの方に体を寄せられた。はわッ と変な声を出した自分にも驚いた。

「 女の子一人で他学年のクラスに来るのは

危ないよ。ね、 …… 桜木さん? 」

今日 ういがずっと探していた人が、まるでラブコメの王子様のように現れてくれて更に驚いた。

「 あ… その、傘 ありがとうございます。 」

今度はちゃんと言えた。素直に嬉しいと思えたのはいつぶりだろうか。優しい目をした王子様は傘を受け取ってくれた。

「 ん、ありがとう。 」

チャイムが鳴って、話は強制終了させられてしまった。急いで廊下を走る。次の授業だけは サボらずにちゃんと受けようと思えた。

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