第8話 水の強襲
「5…4…3…2…1…0。10分経過した。一応警戒しておいて」
サキナは鋭い声で言った。そしてしばらく歩くと…
「これは…水たまり?」
自分たちが歩いてきた道は水たまりなんか1つもなかった。この世界の天候が晴れだけではなく雨も存在するとしたらここだけ水たまりがあるのはあまりにも不自然だ。
「きた」
サキナは俺にだけ聞こえる声で言った。その瞬間両端の木から水が俺とサキナに向かって飛んできた。サキナは瞬時に後ろに動きかわした。俺は少し反応が遅れたがギリギリ体をひねったおかげで回避した。
サキナの話には説得力があった。だがそんな姑息なやつはいないだろうと内心思っていた。固定概念に囚われていたのだ。バーサスでフォルテと対峙し、戦った時もそうだった。絶対に勝てると思い込んでいた結果負けたのだ。サキナがいなければ間違いなくやられていた。
「完全に読みどうりね」
「ハッハッハ!よくかわしたな。あっぱれだ」
両端の木の陰から1人ずつ出てきた。
プレイヤーネームは【テンネン】と【スイドウ】だった。茶髪で2人とも筋肉質のある体格をしており、顔はどう考えても似てはいないがが顔を隠すと体格のせいで双子にしか見えなかった。
「お前らは水のオブジェクトをスキャンしたのか」
俺は2人に問いかけた。
「ああそうだ。俺は天然水が好きだから天然水にしたのさ。で、こいつは水道水が好きだから水道水にしたって訳」
テンネンが説明をしてスイドウは頷いていた。そんなのどうでもいいわ!とでも言おうとしたが何故か聞いたことのある単語だ。天然水…何故か既視感がある。
(そういえばイヌが天然水AとかBとか言ってたなこれがデジャブか…)
「俺たちからも1ついいか?なんであの攻撃を避けられた」
「元々予測していた。ただそれだけ」
「ああそうか。じゃあお前ら、俺たちの仲間にならねぇか?」
「私たちを倒そうとしてきた奴とは仲間になる気は無い」
サキナがキッパリと強い口調で断った。
「まあいいぜ俺らはレベル13。お前らはレベル1。それで勝てるとでも?」
レベルはプレイヤーの頭の上に表示されている。同様にHPもだ。そして俺らは物理攻撃で相手は特殊攻撃。つまり距離を取られたら不利でしかない。おまけにレベルの差によってHPと攻撃力が圧倒的に違う。この差は大きい。
テンネンは不自然に話しかけてくる。倒すだけなら俺たちが避けた瞬間すぐに攻撃を仕掛ければ良いはず。仲間に勧誘するためか。いや違う。クールタイムのための時間稼ぎだ。
「おいサキナ。あいつら時間稼ぎしてるぞ」
俺はサキナに声をかけた。
「分かってる」
俺にはこいつらに勝つビジョンがあまり見えなかった。サキナには何か考えがあるのだろうか。
「気づいてるみたいだな。俺たちがクールタイムを待っていたことを」
「ナツヒ君。斧を取り出して!」
「了解」
俺は斧を出した。やったことは無かったが右手の中にあるチップに対して気持ちを込めてみると斧を取り出すことが出来た。
「オブジェクトスキル『水進力』を使用。そしてオブジェクトアビリティ天然水砲レーザー発射!」
無数の凝縮された水が俺たちに襲いかかる。思考が遅れて俺は立ち尽くすしか出来なかった。すると…
「ブシッッッ!バシュッッッ!シャッッッ!」
「なにっ!男を守りながら水を全部切り裂いただと…」
テンネンは驚いた表情をしていた。
「ナツヒ君。ぼーっとしてないでオブジェクトアビリティを使って!」
「わ、わかった。オブジェクトアビリティ『チェインアックス』!」
すると斧と棒の間が鎖に変化した。
「横に振って!」
「ハァッッッ!」
鎖状に伸びた斧は相手に命中するかのように思えた。だがしかし…
「オブジェクトアビリティ『水道水ウォール』」
だまってたスイドウが急に言い放ち目の前に人1人分の水の壁が出来た。
「残念…な、なに!?」
気がつけばサキナは空中にいた。サキナは俺が斧を投げた瞬間オブジェクトスキル『超速』を使い斧の上に乗ったのだ。そして上はがら空きだ。
「オブジェクトアビリティ『斬撃』!」
サキナの活躍によりテンネンとスイドウは消えた。俺たちはこのゲームで初めてプレイヤー勝利したのだ。
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