第6話 ショッピング

俺とサキナはゆっくりと景色を楽しみながら道なりに歩いていた。


「とりあえず服屋に行かない?服によって能力が変わったりするとかはないけど初期装備の服じゃなんか味気ないじゃん?」

サキナは不意に後ろを向き俺に声をかけた。

「確かにな。でもどうやって買うんだ?お金なんて持ってないけど」


「初めはコインが100枚支給されているからそれで買えるよ。所持金欄があるでしょ?」


「ほんとだ。しっかり100枚あるな」

サキナが来てから分からないことは全部サキナに聞いている。なぜなら…

(おい猫、じゃなくてイヌ。大丈夫か?)

脳内で声をかけても返答がない。いびきだけが聞こえる。恐らく寝ているようだ。



なんやかんやあって服屋にたどり着いた。経営しているのはこのゲームのNPCだ。自由に選んで試着が一瞬で出来る。気に入ったものがあれば購入し、ゲーム内で使えるようになる。サイズも自動的に合わせてくれるらしい。


「いらっしゃいませ〜服屋はこちらですよ〜こちらの画面から商品を選択して購入してくださいね〜」

NPCの名前は『リア』と言うらしい。悠長な喋りに加えて表情が豊かだ。NPCとは思えないくらい人間に近いと感じた。


商品を見ていると黒を基調とした青色のコートが目に入った。このコートはバーサスの時に着ていたのとよく似ている。同じ会社だからなのかは分からないがとにかく好みでしかなかった。俺は迷わずこのコートを選択し、購入した。


「私はこれにする」

サキナは赤紫のコートを選んだ。俺のコートと色違いだ。ナツヒとサキナは30コインを支払いコートを購入した。


「よし装着っと」

久しぶりに着たコートはとても着心地が良かった。制作会社が同じだからなのかコートの触り心地も見た目も全くあの時と一緒のように感じた。


「サキナのコートと色違いか」


「ほんとだ。色違いだけどお揃いだね」


「ん〜…なんか…2人揃って同じコートは…」

少し間を置いてナツヒは言った。


「前にやったときこのコートに目を付けてて、買うって決めてたから、色違いとはいえ服が被るなんてびっくりしたよ。私もコート好きだからさ〜」

なんとも言えない感情が押し寄せてくる。恥ずかしさなのかそれとも…まあいずれ慣れていくだろう。


「で、これからどうするんだ?」


「そうだな。門を出る前にHPを回復する薬は持っておきたいかな…最初に買えるものはそのくらいだから持ってて損は無いと思う」


俺とサキナは回復薬が買える店に着いた。回復薬は『小』、『中』、『大』とあり、値段はそれぞれ10コイン、100コイン、1000コインに振り分けられている。小の回復量は10、中の回復量は100、大の回復量は1000となっており、コイン数に応じて回復量が決まっているようだ。俺とサキナは残りの70コインを回復薬『小』に使った。共にコインは0となった。

「よしっ。これで準備万端だな」


「さっ、早く門に行こう」

最初と同じようにサキナが先へ行き、俺は後ろからついて行った。

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