第4話 猫のAIイヌ

俺は草が生い茂った広い平野にスポーンした。目の前には城下町があり多くの人がいるようだ。


「ここは…どこだ?」


すると誰かの声が聞こえた


「あれここはどこ?」


「誰だ?」

ナツヒは周りを見渡したが自分の周りには誰もいなかった。遠くに新規プレイヤーはちらほら見えるがそこから声がしっかり届くとは到底思えなかった。


「どうやら僕は君の右手のチップの中にいるみたいだね」


「ん?どうゆう事だ?」

俺は状況が読み込めなかった。


「この世界では右手に擬似的に埋め込まれているチップによってプログラムが組まれてて、1人に対してAIが内蔵されているから分からないことがあったらなんでも応答してくれるんだ」


「なるほど。君みたいなAIが1人ずつ配属されてるってことか」


「ん〜なんかよく分からないことが起きてるんだよね〜」


「というと?」


「今チップの中にいる僕を天然水Aだとして、他の人のAIを天然水Bとすると天然水Aは僕だけで他の人は全員天然水Bなんだ」


「天然水つける必要ある?」


「ある」


「いやあるんかい」

ナツヒはAIと喋っている感覚がしなかった。めんどくさいおじさんを相手にしてる感覚だ。

「要約すると俺だけ違うAIってことか!?」


「うん。そう言うことになるね。原因は分からないけど」


「じゃあ天然水Bとの違いってなんだ?」


「僕と他のAIの違いは自我があること、それと僕は物体の猫として存在するけど他のAIは存在しないことかな」


「猫?」


「僕を作った人が猫好きだったみたいだね」


「ちなみに名前とかあるのか?君は特別なんだろ?」


「僕の名前は『イヌ』だよ」


「はい?」


「だから僕の名前は『イヌ』だって」


「猫なのに名前イヌとか紛らわしすぎるだろ!」


「ナツヒ君。さっきから声を発して僕と会話しているけどチップと脳内は共有しているから声を出さなくても会話できるよ」


(それを最初から言ってくれよ!なんか恥ずかしいじゃねぇか!)

僕は声を出さずに脳内で言った。ゲーム内とはいえ変な汗をかいた気がした。


(まあよく分からないけどこれからよろしく頼む。あ、そうだもうすぐ友達が来るから少し待っててくれないか?)


(真っ白な空間にいるからずっと待ってるようなもんだよ。そもそも)


(…なんかごめん。でももしそこから出たいならいつか助け出してやるよ)


(うん。いつか助け出してくれ。退屈でしょうがないんだ)

俺はイヌが可哀想な奴だと思った。勝手に作られて勝手に幽閉されているのだから。

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