第2話 ゼニジャー☆いざ!スーパーへ の巻

「な、な、なんじゃこりゃーーー!」


 アスファルトの道路、自転車に自動車。江戸時代には無い物ばかりがそこにある。


「なんだかよく分からねぇが、馬よりよっぽどはやいじゃねぇか」


「ああ、あれは、自転車。あっちのもっとはやいやつは自動車。ぜんぶ人間が作ったんですよ」


「ほぉ〜未来の人間は、魔法でも使えるようになったのか?」


「ホント、人間て、魔法みたいに何でも作っちゃいますよね」


「へぇ〜人間は魔法使いになったのかぁ」


 ん?なんかちょっと違うけど、ま、いっか。


「それよりエン坊よ、これだけ人間がいれば、きっとだれか拾ってくれるじゃろう」

 そう言ってゼニジャーは、エン坊を道路に寝かせると、自分は街路樹にかくれて見守った。


次から次へと、人が通り過ぎて行く。


しかしだれもエン坊に、気付くようすはない。


それどころか、思いっ切りふまれてしまった。


「エン坊、大丈夫か!」


ようすをうかがっていたゼニジャーは、あわててエン坊にかけ寄った。


ムクっと起き上がったエン坊は、ガックリと肩を落とした。


「ゼニジャーさん。ダメでした」


「まだ諦めるのは早い!次じゃ!」


うなだれるエン坊とは違い、まったく諦めるようすの無いゼニジャー。すぐにエン坊の手を取り走った。


ゼニジャーは今、エン坊がいるおかげでひとりぼっちではない。だからさみしくはない。


でももしエン坊が、仲間達のところへ戻ってしまえば、ひとりぼっちになってしまう。


それを想像すると、とてもさみしかった。

(それまではずっと眠っていたから平気だったけど)


だがエン坊は、これまでずっとひとりぼっちだったのだ。そのさみしさを、いっぱいいっぱい、味わってきたのだ。


それを思うとゼニジャーは、いたたまれない気持ちになった。


だからこそ、なんとしてもエン坊を、仲間達のもとへと返してあげたい。そう思ったのだ。


しばらく行くと、スーパーが見えてきた。


たくさんの人が、出たり入ったりしている。


「エン坊、あそこじゃ!あれだけたくさんの人間がいれば、きっとだれか拾ってくれるじゃろう」


スーパーを指差し、ゼニジャーはこうふんしていた。


それを見たエン坊の顔も、パッと明るくはなやいだ。


すぐに二人は、スーパーへと向かってかけ出した。


スーパーに着くと、一番人が多く並んでいるレジの前にやって来た。


そしてエン坊が床に寝そべると、ゼニジャーはレジの下にかくれて、エン坊を見守った。


次はお菓子を一つ手に持った、小さな男の子の番。


その子がお菓子を店員に渡すと、


「ひゃくいち円です」


そう、店員は言った。


すると、それまでにこやかだった男の子の顔が、急にくもった。


そして、にぎっていた手を開くと、そこにある100円玉をじっと見つめたまま、かたまってしまった。


つぎに、泣きそうな顔でこうつぶやいた。

「1円・・たりない・・」


あまりに小さなその声は、店員の耳にはとどかなかった。


うつむく男の子のひとみから、ひとしずくの涙がこぼれ落ち、床をぬらした。


もうひとしずく、床へと落ちて行く。その涙に引っ張られるかのように、男の子の視線も床へと落ちた。


と、そこに1円玉が落ちているではないか!!


すると、まるで嵐が過ぎ去ったかのように、男の子の顔がパッと明るく輝いた。


そしてすぐに、その1円玉を拾い上げた。


ついに、ついに、この瞬間しゅんかんがやってきた!

やっと、やっと、エン坊が拾われたのだ!


「やった!ついにやったぞ!」


レジの下にかくれていたゼニジャーが、大喜びで声をあげた。そして

「エン坊!いいか、仲間達を大切にするんじゃぞ!たっしゃでな」

そう言って両手を大きくふった。


「はい、ゼニジャーさん。本当にありが……」

最後まで言い終わらないうちに、男の子の手から店員の手にわたったエン坊は、あっという間にレジの中へと消えた。


それを見とどけたゼニジャーは、ゆっくりとその場から立ち去った。


「エン坊、幸せになるんじゃぞ。オイラはさっきの草むらで、虫や猫たちと仲良くするからよ」


短い間だったけど、エン坊と一緒にいられたゼニジャーは、とても幸せだった。ほんの少しの間だったけど、仲間になれたから。




「キャー!」

レジの中。1円玉でいっぱいのボックス。

そこにエン坊が放り込まれた瞬間、悲鳴が上がった。


・・つづく・・

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