第30話 第二の特異種①

 「キエエエ!」

 巨鳥は大きな声で鳴くと、まだ遠いところから火を噴いた。

 「こんな遠距離から魔法を撃ってくるのか?」

 七音のメンバーは驚いたが、透士が冷静に前に出て盾で受ける。

 ドーン!

 先ほどより遥かに大きな炎の玉が盾にぶつかり、大きな音がして炎が飛び散り、透士の体に降り注ぐ。

 職人さんが仕上げてくれた布には火魔法耐性があるが、透士は剥き出しの腕や脚に火傷を負った。

 「何て威力なんだ。ヒール」

 すぐに顕続が回復するが、これまでに経験のないような強力な炎の魔法に、七音のメンバーの表情は厳しくなる。

 「行きます!」

 愛が矢を射た。

 怪鳥に向かって真っすぐに矢は飛んでいくが、怪鳥は鮮やかにサイドステップして躱した。

 巨体なのに機敏だ。

 「雷撃!」

 「炎撃!」

 続いて宗人と千聡が魔法を撃つ。

 今度は二発とも命中した。

 魔法は矢よりも速いし、矢を避けた直後に着弾したのもプラスに働いたようだ。

 雷撃は巨鳥の胴体に命中し、血が飛び散る。

 それなりのダメージを与えたようだ。

 ほぼ同時に炎撃も怪鳥に命中している。

 ぱっと炎の華が咲く。

 だが怪鳥にダメージが入った様子がない。

 「火魔法は効かないのか?」

 「宗人、火魔法を使う魔物だから、きっと火への耐性も高いんだと思う。」

 「そうか、きっと千聡の言うとおりだな。じゃあ俺は前に出る。」

 宗人は刀を抜いて、魔物に向かう。

 巨鳥は嘴を突き出して突進してきた。

 透士が盾で受ける。

 巨体の圧力が加わり、盾がきしむ音がする。透士は後ろに押し込まれるが、どうにか受けきった。

 「一閃!」

 魔物の突進を透士が止めたところに美邦先輩が槍スキルを放つ。

 七音の連携レベルは上がっている。

 「キュエエ!」

 だが怪鳥は鎗の穂先を嘴ではじく。

 この鳥の魔物は、飛べない代わりに地上での動きは素早いようだ。

 バックステップして少し距離をとると、口を開いて再び魔法を放つ。

 またも透士が盾で受けたが、至近距離なので今度は上半身が炎に包まれる。

 炎に耐性のある布を防具の下に着ているが、小さくないダメージを受ける。

 「ハイヒール!」

 顕続は上位の回復魔法を唱えた。

 魔力を消費するが、通常のヒールでは十分に回復できないと判断したのだ。

 「飛電!」

 怪鳥が炎を吐いた直後を狙い、千聡が雷魔法を放つ。

 普段使う雷撃では威力が足りないと判断して、千聡も魔力を惜しまずに上位の魔法を撃った。

 飛電は魔物に命中し、巨体が少しぐらつく。

 今度はいいダメージが入ったようだ。

 怪鳥の身体の表面を雷の余韻が走っている。

 「シッ!」

 そこに蘭の投げたナイフが怪鳥の目に向かって飛んでいく。

 当たったかと思ったが、怪鳥は首を振って急所をかわす。

 それでも致命傷ではないが頬に刺さり、魔物は血を流した。

 これなら何とかなると、七音は手応えを感じっつあった。

 そのとき。

 「キョエエエエエ!!」

 一際大きく怪鳥が吠えると、地面に二つの魔方陣が生まれた。

 その魔方陣からは、少し体格が小さいが、よく似た怪鳥が二羽現れた。

 「何だと!」

 「こいつは眷属を召喚できるのか!」


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