その日②

「監、獄……」


聞き慣れないその言葉を俺が反復していると


「おい、ログアウトできねえぞ!」


どこかから、そんな絶叫が聞こえてきた。


「え?」


隣にいたカーラがハッとしたように自分の体を見回す。


「本当だ」

「どうしてだよっ?」


続いてキャンディとアカネも自らの手を眺めて愕然がくぜんと呟いた。


それはミドリコやヒロカ、シーファも同じ。もっといえば、他のプレーヤー達からも狂乱に近い叫び声が所々から起こっている。


『これは、苦渋の決断でした。そんな敵がこの地球に接触してしまえば、それが私達人類にとって最後の日になることは間違いなかった』


そんなクダラノ内の混乱をよそに、映像の男は神妙な顔で俺達へと語りかける。


『だから、奴等をクダラノに閉じ込め、封印したのです』


思考のどこかで予想できた流れではあった。


けれど、理解が、心が追いつけない。


だって、それは。彼の言葉が、意味するところは……。


「私達、ここから出られないってこと?」


呆然と立ち尽くしたまま、ミドリコがこぼした声。


それに答えられる者は、ここにはいない。


『仕方のないことです。全人類80憶人か、現在クダラノにログインしている7000万人か。どちらを選ぶかは、子供でも分かることです』


「……つまり、ボク達は巻き込まれたうえ、クダラノに置き去りにされたってことかよ」


ポツリと声を震わせるキャンディに答えるように、男は言葉をいだ。


『しかし、絶望ばかりではありません。クダラノ空間では、今までNPCとして存在していたモンスターを閉じ込めた敵と置き換えることが可能です。すなわち、現在ログイン中のプレーヤーは彼等を今まで通り討伐できるという訳です』


「じゃあ、その敵にやられたら私達はどうなるの?」


そんなヒロカの問いに、今度は彼は答えない。


ただ代わりに、慈悲深い表情を浮かべ こう言ったのだ。


『クダラノの皆さんの、ご武運を祈ります』

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