レベル4エリア②
「そんなことしてたら迷惑でしょ!」
集まった他のプレーヤーから怒声が飛ぶが、本人達は小馬鹿にしたようにそちらを睨みつけるだけ。
「はあ? 元々敵同士なんだから迷惑もクソもねえだろ」
「誰がお前らの都合なんて考えるかよ」
そう言うと、おまけのようにまたバーストを使った。
「そんなことをしたらバインバインが逃げてしまうだろ」
俺らがその爆発に怯んでいる中、前に進み出たのは同じようにここに来ていたタイカさんだった。
「いやいや、これで隠れてる奴が驚いて飛び出してくるんじゃね?」
そう言いながらタイカさんの間近でバーストをもう一発炸裂させる。
バンバインを今まで憎たらしく思っていたが、こんな事をされるならちょっと可哀想に思えてくる。
「で、ルール違反はどうなったんだよ?」
「俺ら、何も悪いことしてねえよなあ?」
絡まれた司会のお姉さんは渋い表情ながら
「エリアや他プレイヤーを攻撃しない魔法は許可します。ただし、常識の範囲内で行動してください」
そう きっぱりと告げた。
「はいはい」
「負け惜しみおつー」
そんなことを言いながら小林達はこの場から立ち去ってゆく。
「ほんと、何なんだ あいつら」
アカネが軽蔑を込めて呟くが、それはここにいる誰もが同様の気持ちだったろう。
イクリプスがあんな連中ばかりだとしたら、相当ヤバい一大勢力が出来上がりつつあるということだ。
アマテラスが
俺が、そんな
「あ、バンバイン」
独り言のように、隣にいたミドリコが呟いた。
「ああ、俺達も引き続きバンバインを探そ……」
その声に答えようと顔を上げた俺の目の前に、真っ黒い球体が現れる。
「……へっ?」
黒い丸、大きく跳ね上がる弾力、体の中央についたスマイルの顔。
間違いなく、バンバインそのものだった。
「あでっ!!」
そして、そいつにアタックをくらった俺は、その場で後ろ向きに倒れ込んでいた。
「アタル!」
「いたぞ、バンバインだ!」
「逃がすなっ」
杖で防いで顔面直撃は
「アタル、大丈夫?」
ミドリコとアビーが抱き起してくれたが、痛覚は切っているので痛みはない。
「ああ、ちょっと驚いたけど」
額を押さえて立ち上がると、周囲に残っているのはアカネミドリコと、タイカさんのチームのメンバーだけ。
他のプレーヤーは突如出現したバンバインを追いかけて全員行ってしまったようだ。
森の中からはまたバーストの
「くそ、あんな急に出てくるなんて」
もしアマテラスの体だったら、絶対に反応して捕まえられていた。
けれど、それをここで考えても仕方ない。
「本当に速かったね」
「誰か捕まえちゃうかなあ」
心配そうに森のほうを見るミドリコとアカネへ俺はゆっくり向き直る。
「いや、大丈夫だろう」
言おうと思っていた言葉は、すぐ
「タイカさん?」
びっくりした俺を、やけに落ち着き払った表情が振り向く。
「ちょっと、茶でも飲んでくか」
「え? ……あ、はい」
その優しそうな笑みに、ついつい俺達は頷いていた。
レベル4エリアは面積のほとんどが森に囲まれているが、小さいながら村というか集落があり住人も住み着いている。
その一角にある出店の長椅子で、俺達は茶と和菓子をいただいていた。
「本当に大丈夫なのか?」
三色団子を
行動と言葉が伴っていない気がするが、それはアカネだから仕方ない。
俺も
「まあ、こんな早くバンバインが捕まるなら誰も苦労はしないよ」
穏やかに微笑むタイカさんからは余裕すら感じられる。
もしかして……と言いかけて俺は開きかけた唇を閉じた。
この質問はしても良いものか。俺にとっても不利にならないか。
そんな
「もしかして、タイカさんてセカンドアバターですか?」
それを代わりにあっさり尋ねてくれたのは、あの小林達にイジメられていたボーテさんだった。
「ああ。実はそうなんだ」
対するタイカさんも別に隠す風でもなくそれを認めた。
やっぱり、俺の予想は当たったらしい。
「セカンドアバター?」
「クダラノ内の2人目のアバターってことよ」
「つまり、いつもプレイしてるのとは別のアバターを作るってこと?」
そういう発想がなかったアカネは驚いたようだが、クダラノでセカンドやサードでキャラを作ることは結構よくある話だ。
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