白金色の初恋②
「ネットで仲良くなっただけの相手を好きになったの?」
ヒロカの声に、俺は首を捻る。
「まあ、好きになったのはクダ……ネット上での会話とかやり取りがきっかけだけど。リアルの彼女のことも知ってる」
「リアル?」
「SNSのアカウントを教えてもらったから」
俺達が出会って1年した頃、インティは現実世界での自分のSNSのアドレスを教えてくれた。
その時は、こんな所で知り合った奴に個人情報なんか教えるな!と言い聞かせたものの、まあ当然その後 気になって見てしまった。
インティは、俺より5つ年上のペルーに住む美しい女性。
主に写真を投稿するSNSには、彼女の楽しそうな日常が溢れていた。
家族や友達と食事や旅行を楽しむ姿、彼女の故郷の美しい風景、数年前から登場するようになった背の高い青年。
そして、1年前の結婚式の写真。
白いウェディングドレスを着たインティは、とても幸せそうで、綺麗だった。
「結婚したのに誰かから好意をもたれてるとか気持ち悪いだろ。だから、終わりにすることにした」
なんて恰好つけた言い方をしたけれど、本当は全然吹っ切れるはずなんてない。
今でもインティのSNSを開きそうになる手を必死で抑え、クダラノ内で会えば震えるほどドキドキしてしまう。
自分でも女々しいとは思いつつ、この想いは1年が経った今でも消え去ってはくれなかった。
「その人はアタルが好きだったこと知ってるの?」
「知らない。というか、夢にも思ってないだろうな」
人生の半分も思い続けてきたくせに、その気持ちを言葉にするどころか表情にさえ俺は出すことはなかった。
彼女に好きな人がいるのは分かってたし、口にしまえば今までの関係が壊れてしまうのではないか、それなら信頼される友人のままでいい。
何千回も悩んだ末の、俺なりの結論だった。
「……でも、アタルはこれからもっといい女に出会えるさ!」
少しの間 沈黙してまった空気を破ったのは、アカネの明るい声。
「別に励ましは
無理やり喋らせたくせに、何故か俺が可哀そうなかんじになってないか……?
それに、インティ以上の人なんて今はとてもじゃないが考えられなかった。
「それも大人になってから振り返ると、甘酸っぱい青春の1ページにすぎないんだけどねぇ」
しまいにはキャンディにまでも訳知り顔でそんなことを言われてしまう。
本当にこいつ いい歳したおっさんとかじゃないだろうな……。
「ま、それもそうかもな」
とはいえ、皆からの気持ちは嬉しかったので素直に頷いておいた。
ふと肩の力が抜けて、再び口をつけたお茶はすでに冷めていた。
「そういえば、2階の寝室が完成したの。アタル見てくれば?」
話題を変えるようにミドリコが言うから、俺もつられて頭上の階段を見上げる。
この家は3階建てを予定していて、まず寝室だけは先に完成させるのだと以前にアカネが話していた。
「へえ。ちょっと行ってこようかな」
何だか妙な空気になってしまったこともあり、独り言のように呟いて俺は椅子から立ち上がる。
「うん。インテリアもこだわったんだから、よく見てよ」
ヒロカにも言われて、俺は家の2階へと足を向けた。
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