1.性欲について
最近性欲がわかない。
太り過ぎなのが原因なのか、それとも加齢による自然な減退なのか、とにかく性欲がない。
朝立ちもしなくなって久しいが、性欲がなくなってわかったことがあった。
それは男性は性欲がなくなって初めて本当の自分に出会えるということだ。
思えば今までに何度性欲に負けて女性に不本意な気の使い方をしたものか。
聞きたくもない話に相槌をうち、答えのない相談を聞き、退屈な顔をされれば面白い話を披露し、歓心を買って何かとかデートに誘い出す。もちろんそのデート代は私持ちだ。
それもこれもいつかは性交渉にたどり着くためだ。
そしていい服を着て清潔感を保ち、ジムに通い体型も維持し、そしてそういう生活のためにお金を頑張って稼ぐ。そのためには残業も厭わず体に鞭を打つ。
もう少しお金があればなあ、なんて考えるのはほとんど性欲につながる行為のためである。
しかし、性欲がなくなるとこの生活パターンが大きく変わる。
まず、女性に媚びなくなる。
くだらない話は一切聞かなくなるし、「つまんなーい」と言われれば、「それはお前がつまらない人間だからだろう」と即答できる。
服なんてどうでもいい、サイズが合って暖かければ良いのだ。
無理してアルマーニの服など買わなくても、洋服の青山は2万円でイージーオーダーしてくれる。残業なんてしなくても生活は十分に成り立つのだ。
体型もどうでもいい。ジムにも行かない。
浮いたお金で逆に食べたいものを食べ飲みたいものを飲む。
浴びるようにプリン体を接種した後、痛風に怯える、そんな暮らしが待っているのだ。
女性のために己を曲げることのない、本当の自分がここにいるのだ。
思えば多くの宗教では性欲のコントロールを必要とする。
それは本当の自分と向き合うためではないのだろうか。
深く深く自分と向き合い、そして外的要因にコントロールされることなく、自分を持っていきたい方向へ誘導する。
性欲とは哲学の対義語であったのだ。
それに性欲を失うことは博愛精神にも通じる。
ルッキズムとは無縁な存在になれるからだ。
ブスにも美人にも同じ態度で挑むことができるようになる。
抱きたいと思わなければ、美人に気後れすることもないし、ブスを蔑むこともない。
女性は同様に価値がないのだ。
・・・これは性欲の対象としての話である。
決してポリコレに挑もうという意図ではない。
そして、ここまで読んで皆さん薄々察しているように、私は独身である。
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