ローファンタジー

 まあ、実際うまい棒(合法ハーブ味)1本をウーバーすると代金がいくらになるのかは知らんが、仮に500円だったとしても――ほぼ家でうまい棒が届くのを待っているだけで5000円。差し引きで4500円とうまい棒1本を手に入れる事が出来るのなら悪い仕事ではない。寧ろうまい棒(闇医者が使用しているハーブ味)1本を買っているだけなはずなのに4500円が貰えると考えれば――合法の闇バイトとしては割高と言えるだろう。


 ……というような事を私とカエルがドク口に説明したところ。


『全然冒険者っぽくない』


 というふざけた理由で却下された。まあ、確かにうまい棒(ポーション味)やうまい棒(ポーションのあまり汁味)の方が冒険者っぽくはなっただろうが、私はあくまで付き添いなのでカエルが変更にOKを出したというのならば私も黙って従うまでだった。


 なのでドク口とカエルが更にクエストを漁っていると。

『ん? あれ? カエルさん。モンスター退治みたいな上級クエストってA級か特A級にしかないんじゃなかったでしたっけ?』

 とドク口が大仏のマスクをカエルに向けつつも、指差しているクエストに私が視線を落としてみると――


『モンスター退治』


 というクエストが確かにあった。まあ、正確には上級クエストにあるのはモンスター討伐ではなくモンスターのうんこ掃除とかだった気もするが、それは今はいいとして、これはどういう事かと私が頭に疑問符を浮かべていると。

「ああ、それですか……」

 と言いながらカエルがパネルを操作する。

「あ、やはり……これはあれですね。モンスターはモンスターでもモンスタークレーマーやモンスターペアレント退治の事ですね」

『モンペッ!? じゃあ人間を退治しろって事ですかっ!』

 ほぅ? 死神おまえの得意分野じゃないか……しかもモンスタークレーマーやモンスターペアレント、頭隠して尻から出すモンスターみたいな社会にとっての害獣を抹殺するなら有意義なクエストじゃないか。

 と私が感心していると。

「いえ、別に人間を退治する訳ではないです。このモンスタークレーマーやモンスターペアレントというのは害虫の名前で、要は農家さんが作った農作物だいこんである『冬限定の冷やし中華』を食い荒らす害虫駆除の手伝いを依頼してきたって事ですね。因みにこいつらはポケットに入るサイズの害虫なので『ポケットモンスター クレーマー・ペアレント』略して『ポケモン クレーマー・ペアレント』と呼ばれているらしいです」

『絶対任天堂に怒られるヤツ!』

 と小さく叫ぶドク口だが、なるほど。害獣ではなく害虫だったか……しかしまあ社会のためには抹殺しておいた方が良いクズである事に変わりないな……有意義なクエストじゃないか。


 ――という事に非常に満足したのか、ドク口からGOサインが出たので我々はこの「モンスター退治」というクエストを受注する事にした。

 そしてこの冒険者ギルドというのは結局のところ労働力の斡旋所……つまりヤクザ商売で労働力さえ提供すれば信用もクソもいらないらしく、身分証がなくても簡単な審査と水着審査で仕事を請け負う事が出来た。無論、この水着審査というのは我々が水着を着てそれを審査されるのではなく、我々がそこら辺にある会社役員が脱ぎ捨てた水着を10点満点で何点か審査するだけの簡単な審査だった。まあこの世界に来たばかりの身分証のないカエルが仕事を請け負う事が出来たのを考えれば、ヤクザ商売の審査なんて所詮はこんなものだろう。

 という訳で私達は最終的にギルドから成功報酬等を受け取る時に必要になるICカードだけを受け取ると、そのまま依頼主である農家を目指しギルドを出発するのであった。


 そしてまず私達が最初に行ったのは、郊外まで殺人ピエロが運転するタクシーではなく普通のタクシーで向かい、そこからは依頼主の家まで徒歩で向かう事にしたのだが――これが失敗だった。

 そもそもとして依頼主の家は農家なだけあって畑に囲まれていたようで、別にそこまでは良かったのだが正確には山と畑に囲まれたところに住んでおり、私達がタクシーを降りたところは住所的には依頼主の家の近くなのだが……それは山の中をある程度直進した場合であり、山を回り込むようにして向かうとまだ2キロくらいはあるという……要はタクシーを降りるのが少々早かったという話だ。

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