急
よし。ならば確認のためにちょっと探りを入れてみるか。
「いや、あの……そもそもなんで冒険者ギルドに行くんですか? さっき言ってたみたいにドク口さんもカエルさんも、薬草採取で強力なモンスター……例えば上半身が人間で下半身も人間のケンタウロスとかに本気で襲われたい訳じゃないですよね?」
『いやそれただの人間じゃないですかっ!』
と頭が大仏で体が死神の人間じゃない
「いや、ちゃんとケンタウロスの両親から生まれているので生粋のケンタウロスですよ。ちゃんと『ヒヒーンッ』て鳴きますし」
『いやケンタウロスは上半身人間なんだからそもそも「ヒヒーンッ」って鳴かないでしょ! なんで急に馬になっちゃうんですかっ!』
そういうお前はなんで大仏なのに「ヒヒーンッ」て鳴かないんだ?
……としていると横から片手を上げたカエル。
「あの、じゃあドク口さんに代わって私から説明しても宜しいですかノレさん?」
「えぇまあ、私としてはどちらでも構わないので……」
するとカエルは一つ頷き。
「わかりました。ではまずノレさんの質問ですが、もちろん私とドク口さんも第一の目的は冒険者ギルドでお金を稼ぐ事です。強力なモンスターと遭遇する……例えば上半身が人間で下半身がエルフの半魚人などと遭遇するのはあくまで副次的なイベントと捉えています」
『上半身が人間で下半身がエルフの半魚人って魚の要素どこっ!?』
確かにドク口の言う通りだ。なので私が即座に訂正する。
「そうですよカエルさん。魚の要素がないんですからそいつは半魚人じゃなくて半魚半です」
『ハンギョハンッ!! 半魚半ってどんな妖怪なんですか! それ人の要素なくなってますよっ!?』
うん。だから必然的に魚の要素だけが残るって話だろう? これだと差別にもならないしな。
それにしても――
「お金を稼ぐのが第一の目的なら私が同行する意味ってなんなんです? 私は贅沢する気がないのでこれ以上の収入は不必要なのですが?」
私がアゴに手を当て小首を捻ると、カエルは困ったように眉をハの字に曲げ。
「ははは。御尤もです。ですが私は生活費を稼がなくてはいけないので、学校のない日は冒険者ギルドでバイトでもしようかと思っていたら――ドク口さんが一緒に行きたいとの申し出がありまして……」
『です!』
と何故か自慢のぺったんこなのに巨乳という胸を誇らし気に自らドンと叩くドク口。…………を雪女が冷酷な眼差しで半魚半の尻の穴を見るよりも冷酷な眼差しで私がドク口を見下していると。
「で、そのドク口さんがどうせならノレさんも誘って異世界組パーティーで
『なのです』
なのです……って。と思いながら私はドク口の
とゆーかこいつ、もしかしてカエルに自分の罪は告白していないのに、せめてもの償いとして闇バイトに同行して手伝おうという腹積もりなのか? なら尚更私には関係ない、主食が花の婦人会と軽装=全裸だと思っている老人会くらい関係がない。つまり私はこれに参加する義務はない。
――と考えているとカエルが続ける。
「どうですかノレさん? 魔法学校に入学しなかったという事は酢マホを使わない生活を送る事になります。それはそれで問題ないかとは思いますが、いつかどこかで冒険者ギルドを頼る事になるかもしれません。少なからず魔法が使える人よりかはそうなる確率が高くなるでしょう。となれば……冒険者ギルドがどんな場所でどこにあるのか知っておくのも有益かと思いますが?」
「ん?」
私は悩むフリをしてアゴを撫でる。
こいつ誘い方が上手いな? 私がノリ気じゃないのを見透かしてメリットを持ち出してくるとは……。少なからずドク口よりかは頭が回るし、ドク口よりも尻にホクロが多いはず、そしてそのホクロがこいつの本体だろう。……という少年漫画の悪役の正体にありそうな設定を妄想しつつ私は口を開く。
「わかりました良いでしょう。私も行きます。但し今回だけ……あくまで下調べのために今回だけは参加するという事で」
という返事に、ドク口とカエルは満足そうに頷いていた。
こうして私のスローライフの第一歩は初っ端から阻まれ――まさかの冒険者ギルドへの出向となった。
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