推敲
こうして魔法使いOUT。異世界転生者IN。……をした私とドク口のパーティーは、勇者、死神、異世界転生者という――とてもじゃないがトイプードルを品種改良して生まれたドラゴンといった強力なモンスターとは絶対に戦えないパーティーとなっていた。まあ実際にはただのトイプードルにさえ勝てないパーティーだったが。
そしてそんなパーティーで冒険者ギルドに臨んだところで、ロクなバイトが見つからないだろうとは思いつつも、私自身はバイトが目的ではなかったので特に気にせず、セクシーな武士のハラキリを略すとセクハラになる――つまりセクシーな武士に
……ら。すぐに冒険者ギルドに着いた。
寮から徒歩で約10分程度。なので鼻歌を歌いながらでも徒歩10分で、音響設備を整えたガチの鼻歌だったとしても徒歩10分程度で着く……それほどの近さだったので道は一発で覚える事が出来た。
そんな冒険者ギルドの外観だが――
正直、冒険者ギルドなんて名前だから異世界ファンタジーに良く出てくる安酒場みたいな建物か、バイト斡旋所だから次点で私が元居た世界のハローワークみたいなところを想像していたが……まさかこんなにも異世界ファンタジーに良く出てくるスシローみたいな外観をしているとは想像すらしていなかった。……していなかったが、既に利用した事がある――いや、場合によっては常連なのかもしれないカエルはなんの躊躇もなく「では参りましょう」と自動ドアの前に立つと、私とドク口の返事を待たずして中へと進んでいくので、私とドク口も後に続くしか選択肢がなかった。
――で。入り口というか風除室に足を一歩踏み入れた雰囲気としては場末の酒場感なんてものは微塵もなく、あるのは近代的さと清潔感ともやしの自販機のみ。そして風除室から本格的に屋内へ入ってすぐの所にケモ耳の付いていない美しい受付嬢が佇む受付がある訳ではなく、数台のタッチパネル式の受付機と数台のタッチパネル式のもやしの自販機が並んでいるだけだった。なので私達は先客である他パーティーの居ない、空いている受付機へと進んだ。すると――
「お二人はスマフォはお持ちで?」
カエルが私とドク口へと振り返る。
『もちろんです!』
と胸を張って答えるドク口だが……偉そうに。ついこの間まで持っていなかったお
「左様でしたか。でしたらこの機械のコードをスマフォで読み取っておけば、機械とスマフォをリンクさせていつでも冒険者ギルドの最新情報をチェックする事が可能となります。例えばギルド長の今日のふんどしの色とか、後はギルド長の昨日のふんどしの色とか……」
「いや、昨日のふんどしの色の時点で最新情報じゃないじゃないですか」
と私が堪らずカエルにツッコミを入れるも、透かさず傍らからドク口。
『ノレさんのツッコムところってそこなんですかっ!? もっと他にツッコムところあるでしょう!』
「えっ? …………あ! ふんどしの色だけじゃなくて生地の種類も教えろ! とかですか?」
『どーでもいいでしょそんな事っ!』
そうか? 全裸がユニフォームの者からすれば、ふんどし一枚で一気に防御力が上がるので生地の種類は結構な死活問題だと思うぞ? 特にオリハルコンのふんどしやミスリルのふんどしは布面積以上に防御力が何故か上がるので富裕層には特に人気だしな。なので我々の業界ではふんどし一枚あったおかげで命拾いした……という話は良く耳にする。そこから鑑みるにギルド長もこちら側の人間なのだろう……という情報を私は今の一瞬で得たのだが? ……どーでもいいかそんな事。
としていると、見兼ねたかカエルが愛想笑いを浮かべながら。
「ま、まあまあ。それはそれとしてですね。実は私も最初に来た時はスマフォを持っていなかったので、今日はこうして読み込んでおこうと思いまして……」
と片手で後ろ頭を掻きながら、もう片方の手でカエルがズボンのポケットからスマフォを取り出す。
『なるほど。そうすると家に居てもどんな
とドク口もスマフォを取り出すが――
ふ~ん。そ、私はいいや。もともと今日だけと断ってあるし……と考え私はスマフォを取り出しもしなかった。
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