本編
――更に翌日。
私は予告通りハリ一・ポッタ一と魔法の学園のクラス分けテストである的当てを見学しに行った。……のは別に良かったのだが。午後からなので13時くらいを目安に――別に誰にも何も言わず適当な時間に行ったはずなのに、校門の前で竹中が待っていたのには正直驚いた。衝撃さ加減で言えば江戸川コナンの正体がコナン・ドイルと江戸川乱歩の娘だと知った時くらいの衝撃だった。
そんな訳で竹中の案内でグラウンドを目指していると、そろそろ的当てが始まる――或いはもう始まっているくらいの頃合いだとの事だったが、実際にグラウンドに着くとまだ的当ては始まってはいなかった。しかし明らかに的となるそばや、まばらとはいえ100人以上は軽くいるであろう生徒と思しき人物達を見れば、もう始まるな……というのは的当て童貞の私でもわかった。
なのであくまで見学だけの私は邪魔にならない程度――近過ぎず遠過ぎず、甘辛くすべからく、そしてテストを受ける生徒に紛れ込まず、しかし会話は微妙に聴こえるといった絶妙なポジションを確保する事に成功した。無論、隣には竹中が居る訳で……私はテストが始まるまでの時間潰しとして。
「竹中さん。今日テストで使う酢マホって見せて頂けます? もちろん無理にとは言いませんが……」
すると竹中は何故か微笑んで。
「何となくですけど……勇者殿ならそう言うんじゃないかと思って予め用意しておきました。これをどうぞ」
と言って上着のポケットから1台の酢マホを取り出したが――
準備が良過ぎないか? こいつ成長期のハゲじゃなくて人の心が読める超能力者か? ……あ、いや魔法使いだったか。しかも誰でもなれるデジタル魔法使いじゃなくて30歳まで童貞じゃないとなれないタイプの魔法使いか。……女だけど。
……と思いながら私は竹中から酢マホを受け取り。
「プリケツ。ステータスオープン」
と唱える。すると思った通り真っ暗だった酢マホの画面が明るくなる。
やはりな。竹中の話だと普通酢マホは持ち主の声……もう少し厳密に言えばコレ腐と同じで登録されている声紋にしか反応しないとの事だが、これはテスト用のだから誰の声でも反応するように設定されていると踏んだがビンゴだったようだ。そして私が今実際に踏んでいるのはビンゴではなくウンコのようだ。しかも人間のではなくヘラクレスオオカブトウサギ(メス)のウンコのようだった。
まあ、それは些細な問題なので放っておくとして――
私は酢マホの画面に視線を落とす。相変わらず一番最初に目に付くのは充電だが今はそれはいい。問題なのは使える魔法だが――
『火 レベル1―13』
これだけだった。
なるほど。デフォルトは番号なのか……竹中は「火 ライター」や「風 扇風機」と自分でわかり易いように魔法の名称を登録し直したのだろう。まあ、番号で暗記するよりイメージで覚える方が楽という人間も多いだろうからな……私も個人的には「火 レベル1―13!」とプリケツに命令するより「紫電一閃 幕の内弁当!」とか「迅雷風烈 からあげ弁当半額!」や「刀光剣影 焼肉弁当肉増量中!」とか「蛟竜毒蛇 ステーキ弁当弁当箱増量中!」とか厨二病っぽく唱えて魔法を発動させたい派だからな。
しかし――
「火のレベル1の13という魔法がどんな物か知らないですが、使える魔法が一つしかないという事は、状況に応じた魔法選びのセンスを試すのではなく、魔法のコントロールを見るテスト……という事ですか?」
私が酢マホから視線を外さず呟けば。
「その通りです」
と竹中が答える。
「ただ少し補足をするのであれば、火のレベル1の13がどんな魔法なのかはこちらから説明はしません。なのでもともと知っていればよりコントロールもし易くなる……ので、知識というか筆記試験の延長上でもあるといえますね」
なるほど。というかアレか……酢マホの使い方から魔法のコントロールまでを見るテストで、状況に応じた魔法選びなんかはセンスを問われるからもっと先の話という事か。
と私がテストの全容を掴みかけた時だった。
『あ、いたいたノレさぁ~ん!』
という声に私と竹中がそちらに顔を向ければ。そこには私の知らない、1日3食納豆の糸だけを食っていそうな不審者がいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます